江戸村でござる
□お江戸物語*才蔵とお艶@辻斬り
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「あの人遅いねぇ…」
いわきやを店じまいし、繕い物をしながら、才蔵の帰りを待つお艶。
お膳には夕飯が乗っていて布巾が掛かっている。
「魚屋の源さんが、烏賊のいい所を持って来てくれたのに…。」
烏賊の煮付けが才蔵の好物なのだ。
今日はそれを“いわきや”のおすすめにし、客にも好評で全て売れ切れ。
だがお艶は、亭主の好物をちゃんと別に取り分けておいたのである。
その時、激しく戸が叩かれ、伸張り棒も外す勢いで才蔵が倒れ込んで来た。
肩が血に染まり、地面に赤い滴を落としている。
「お前さん!」
お艶の悲鳴が響き渡った。