江戸村でござる

□お江戸物語*才蔵とお艶A蝉時雨
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才蔵「…てなワケで野郎をとっ捕まえたんだが、張り込んでいる間、まぁ、蝉の煩い事、煩い事、イライラしたぜ。」

お艶は苦笑し「確かにねぇ…。だけど、アレは恋の唄なんだとさ。何年も土の中で過ごして、地上では僅か一週間しか生きられない蝉のね。」

驚く才蔵「お前、そんな事、どこで聞いた?」

お艶「与力の鳩村様。ホラ、去年だか一昨年だか、子供達と川辺の木で蝉採りなさっていた事があっただろ?その後、子供が木から落ちそうになって…」


思い出した才蔵は合点した。「あ、そうそう、助けようとして、自分が落ちたんだよな。あん時か。びしょびしょになったんで、俺の着物をお貸ししたんだった。…変わったお人さ。鈴虫を飼うのがお上手だそうだな。まあ、お前は奉公してたし…」

お艶「だから、嫌って程、よ〜く知ってるよ。虫好きな与力様。で、その時に、蝉の恋の唄の話を聞いたんだよ。短い命の中、必死で相手を求めてるってね…」

才蔵「そうか…恋の唄ね。なら、少しは我慢してやるか。」そう言うとニヤリとし、「俺のは短い恋の唄じゃねぇな。何せガキの頃からだ。年期が入ってる。」

2人は幼なじみである。
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