江戸村でござる

□お江戸物語*才蔵とお艶Cクチナシの花
2ページ/4ページ

お艶はそれから、手早く食事の支度をした。

炊きたてのご飯。

熱々のネギと豆腐の味噌汁。

芋の煮っ転がし

漬け物

それに鰹。

才蔵「お♪鰹か!」


見栄っ張りの江戸っ子は鰹に限らず、初物を誰よりも早く食べたがる傾向が強い。

当然値はかなり張るので、出たからと言って、すぐに口に入れられるのは、大店の金持ちぐらいだ。

結局、庶民の才蔵達が食べられるのは、かなり遅くなって…魚河岸でも鰹が珍しくもなくなり、値段もボチボチ落ち着く頃からである。

三太は満面の笑みになり「オイラ、鰹は今年、初物っすよ。初鰹、女房を質に入れても食いたいってね♪」

お艶「…おやぁ?お前さん、そうなのかい?」亭主を怨ずるように軽く睨む。

才蔵はブルブル首を振り「ンな事するけぇ!大事な女房だ。勿体無い。…おう、三太にはやらなくていいぜ。この罰あたりめ。」


三太「親分〜。」

お艶「…そうしようかね」

泣きを入れる三太「姐さ〜ん。もう勘弁しておくんなさい。失言でした!」

その情けない顔に笑ったお艶は、ちゃんと三太にも出してやり、3人は賑やかに食事を取った。




食後の茶をのんびり喫していた三太は、親分の微妙な合図に気が付いた。

三太「…!あの、オイラそろそろ…姐さん、ご馳走様でした。美味かった!」

お艶「え?もう帰るのかい?」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ