江戸村でござる
□お江戸物語*才蔵とお艶H決意
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ガシュッ!
ガシュッ!
ありったけの力を込め、才蔵はタワシで壁や戸口をこすっていた。
…クソ!畜生…!
割れたままの丼、転がった鍋…
それらを片付け、彼はおぞましい仕事をしている。
才蔵が綺麗にしようとしているのは、お艶の家…“いわきや”
押し込みに親子3人が斬られた、血の跡…。
ベッタリと板壁や戸口に散ったそれを、才蔵は何とかしようと奮闘中なのだ。
血は変色し、ドス黒くなって板に染み込んでいる。
両親は駄目だったが、お艶はかろうじて、生きていた。
肩から胸にかけた袈裟がけの刀傷。
3日3晩、高熱が続いた。
少女は必死に生きようと戦い…ようやく熱も下がって来て、蘭医の司堂は峠は何とか越したと言ったが、まだ意識が戻らない。