江戸村でござる

□お江戸物語*才蔵とお艶I第4部
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才蔵はおけいに呼ばれ、玄関に行った。

笊には大量のしじみがてんこ盛り。


彼は目を丸くする。「どーしたの、コレ?」

母親は「人助けと、お詫びの一石二鳥さ。ほら、お艶ちゃんの野次馬で、最近ご近所には迷惑かけてるからね。丁度いいから、配ろうと思って。」

(配るのは才蔵だが)


日常的に味噌汁に入れるしじみなら、如何にもお詫びでございます!とばかりの麗々しい品物でもないので、貰う相手もそう気を使わないですむだろう。


と言う訳で才蔵は朝っぱらから、ご近所にしじみを配って歩いた。
「コレ、母ちゃんからです。最近、ウチの回りを野次馬が騒いですみません。」

おけいの考えた通り「あらぁ、わざわざ?悪いわねぇ。」とか「気を使わせちゃったわねぇ…お艶ちゃんも大変よね。」などと言いながら「おけいさんによろしく。」と気軽に受け取ってくれた。

近所付き合いは大事なのである。

帰った才蔵は母親に「ところで、人助けって何?」と尋ねた。

おけい「ああ、しじみ売りの子のお姉ちゃんが久しぶりに帰って来たらしいからね。家で売り切れたら、それだけ早くお姉ちゃんの顔を見られるじゃないか。」
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