運命変革行進曲

□虹の国
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雨がやむと綺麗な虹が出ることがある。

太陽光に当てられて、きらきら光る雫。

一度出るとなかなか消えない大きな虹。

あちらこちらを見渡せば、カラフルな街並みが並んでいた。











朝日が差し込む窓辺に、リカーヤは居た。

太陽光が煩わしいのか、しかめっ面をしている。

それでも起きるつもりはないのか、太陽光から逃げるように寝返りを打った。


「皇子、朝です」

「……」

「皇子」

「…あと少し」

「見つかっても知りませんよ。城の兵士があちこち出歩き始めています」

「俺様よりも、ピノが気をつけた方がいいんじゃないのか」

「でしたら尚更起きて下さい。早々に此処から発ちますよ」

「…仕方ないな」


がしがしと頭を掻いて、布団から出る。

そこは簡易ベッドが2つ置かれた、街外れの小さな宿屋。

城からは随分離れているが、国の真ん中あたりの位置にある。

行方不明の皇子を探すべく、城の兵士が街中を歩き始めていた。

次第にこの宿屋も調べられるだろう。


「それにしても皇子…良かったのですか」

「何がだ」

「その……服のことです」


ピノが指差すはリカーヤの服。

見たところ、皇子と呼ぶにはあまりにも不釣り合いな、柄の悪い盗賊のような服装をしている。

一方のピノは、城から抜け出した時の服を些かアレンジしたような格好。

ピノはともかく、リカーヤは全く高貴なる家柄には見えなかった。

その様な服を用意させたのはリカーヤで、用意した――と言うより、作ったのはピノなのだが。


「似合うだろう?」

「…似合う似合わないはともかく、もう少し上品にした方が良かったのではないですか?」

「これから旅をするのに、上品さなんて不必要だ。それにこの方が見つかりにくい」

「僕はともかく、皇子は眼や髪の色でバレます」

「何のためのフードだ。それにカラーコンタクトというのがこの世界にはある」

「…一体どこでその様な物を」

「この間城を抜け出した時に買った」

「皇子…」

「ピノ、念のためお前もこの国ではつけていろ。あ、あとカツラもあるぞ」

「…準備が良いんだか悪いんだか分かりませんね」

「さ、準備が済んだらさっさと行くぞ。兵士が近くまで来ている」

「あ!」

「な、なんだ突然」

「言い忘れてました。おはよう御座います皇子」

「………おう」
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