□どうしようもない恋人。
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酒場デビルズネスト。店の奥、関係者以外立入禁止となっている一室にある一番質の良いソファーはここの主、グリードの特等席。今日もいつも通りそのソファーに座り、グラスに入った酒を飲む。

「…で?どうなんだよ」

そう隣に座っている人物に話しかけた。しかし今グリードの隣に座っているのは、いつもの取り巻きの女性達でも、いつも傍らに置いている犬でもなかった。

「何がです?」

「わかってんだろ?マーテル」

「さあ?」

そう。今グリードの隣にいるのは部下の合成獣で唯一の女性、マーテルだ。
マーテルがグラスの酒を一口飲むと、グリードはマーテルの肩に腕を回しグイッと引き寄せる。

「なあ、どこまでいったんだよ?」

グリードの顔はひどく楽しそうで、ワクワクしている子供のような表情にも見えた。

「ぜんっぜんですよ」

「またまた」

「本当に」

マーテルが半分諦めの混じった声でそう答えると、グリードは目を丸くした。

「…え、マジで?」

「マジで」

グリードは、あちゃ〜…。と他人事とはいえ頭を抱えた。マーテルはというとヤケになったのかグラスの酒を一気に喉に流し込んだ。

「そりゃキツイわ…つか、俺が最後に状況聞いたのいつだよ。あれから全然って…男としてどうなんだアイツ」

「もう硬派とか鈍牛ってレベルじゃないですよ。馬鹿ですよ馬鹿牛」

ガンッと割れない程度にグラスをテーブルに叩きつけると、グリードが、まあ飲め飲め。とまたグラスに酒を注いでやる。
そう、マーテルと鈍牛ことロアは付き合っている。それをグリードが知ったのは、合成獣達を部下にしてさほど経たない頃だ。
ロアは気立ても良く、頼れる奴だ。そう、イイ奴ではあるのだが…コレは男として鈍すぎる。とグリードはマーテルに同情せざるをえなかった。

「だってアイツ、キス一つするにもいちいち許可とるんですよ?んなもん聞く暇あるならもっと強引に来いって話しですよ!」

「お〜言う言う♪」

「言いたくもなりますよ!アイツはもっとグリードさんを見習うべきですよ」

「誉め言葉として受け取っておくわ(笑)」

あの馬鹿野郎!と酒が入ったのもあるのか、本音を次々と吐き出すマーテルに苦笑するグリード。

「しっかしお前本当にイイ女だよなあ、それでも何だかんだでアイツと付き合ってんだからよ」

「さあ?その内痺れを切らせて、他のイイ男見付けるかもしれないし」

少し意地の悪い笑みを浮かべるマーテルに、そりゃ大変だな!とケタケタ笑う。

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