□噛み癖。
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「この間野良犬に噛まれそうになってよお」

「へえ〜…」

「まあ噛まれる前に硬化したけど」

そんで硬ぇ俺の腕思いっきり噛んだもんだから、敵わないって察したのか怯えてキャンキャン言いながら逃げてったんだ。と、刀の手入れをしているドルチェットの背後でこちらとしてはどうでも良い話しをしだしたグリード。だがそれを無視するわけにもいかないので、ドルチェットはとりあえず主人の会話に相槌を打っておいた。

「いきなり飛び掛かって来られるとビビるよな〜」

「ビビったんですか?」

「いんや全然。あんなんよりマーテルのゲンコツの方が万倍ビビる」

あいつ怒るとマジで恐えからなあ。と笑う主人。マーテルと野良犬を比較に出す事自体まず間違っている気がする。

「犬ってよく噛み付くよな〜。………」

「犬に限らず、噛み付く動物はいくらでもいますよ」

「飼い犬とかは噛み癖とかつくと面倒だよな〜。………」

「………あの〜グリードさん。要求するというか期待というか…そういう眼差しをこっちに向けないでほしいんですけど…?」

何?噛み付いて欲しいってか?噛み付けってか?いろいろな意味で無理でしょうが!
いきなり野良犬の話しなんて仕出す辺りから何とな〜く予感はしてたんだ。このご主人がまた何か無茶苦茶なネタを持ち出してくる予感はしてたんだよっ。
一々妙な間がある主人の言葉と、主人の方を見てはいないがさっきから背中に痛い程感じる視線にドルチェットはついついげっそりとした表情が顔に出た。
やめてもらえます?とグリードの方を見ると。

「え〜何の事だ〜?俺様わかんな〜い」

もの凄くわざとらしい棒読み台詞を言いながら顔をグリ〜ッと反対方向に向けたグリード。
白々しい。これ以上無いという程絵に書いたような白々しさ。しかもそんな可愛こぶったって可愛くないから、寧ろ気色悪いから!

「グリードさ〜んそういうのはちゃんとこっち見て言って下さい?ちゃんと俺の目見て言って下さ〜い??

話す時はちゃんと人の目を見て話して下さ〜い?とドルチェットが相変わらず明々後日の方角を見たままのグリードに言うと、グリードからはガッハッハ!といつもの豪快な笑いが、ドルチェットから大きなため息が出た。

「たくも〜変な事しか考えないんですから…」

「ククク…んなに拗ねるなよ、ドルチェット」

シーツの擦れる音とベッドが軽く軋む音、そしてやけに声が近いと思ったらグリードが顔を肩の上に置いてドルチェットの顔を覗き込んできた。

「ッ…グリードさん!近い近い近い!!」

「今更恥じらう必要あるか?」

慣れもせず相変わらずのドルチェットの反応にくつくつと笑いながら、ドルチェットの腰に両腕を回した。

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