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□嘆子村
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俺は桐生あお。中学3年生。
この夏、俺は祖父の知り合いに頼まれて、旅館の手伝いをすることになった。
嘆子村ー・・・
気が付けば、俺はその旅館がある村に着いていた。バスの中で寝ていたのであろうか、ここまでどうやって来たのかよく覚えていない。
しかもバスから降りた途端、悪寒が走った。何に対してなのか違和感も感じる。
まあいっか
まず旅館を探さないとな
田園に沿う一本道を歩いていたら旅館に着いてしまった。都会と違って、家も片手で数えられるくらいしかなく、旅館を見つけるのは容易なことだった。
「こんにちはー!!!」
俺が元気良く言うと、旅館の中から、60歳くらいのおばあさんが出て来た。
「あら、桐生あおくんね?あなたのおじいさんから聞いてるわ。これから3週間よろしくね。私はこの旅館の女将です。」
物腰が柔らかくて、言葉遣いの綺麗な人だった。
良い人そうで安心だ。
「そうだ。うちの孫娘を紹介するわ。夏津〜。降りて来なさ〜い。」
夏津と呼ばれて階段から降りて来た少女は、黒髪を肩まで伸ばしたとても美しい少女だった。
「桐生あおくんよ。夏津、ご挨拶しなさい。」
その少女は不機嫌そうに黙り込んでいるだけで言葉を発しなかった。
「コラ、夏津。」
それを見兼ねたおばさんが少女を軽く怒鳴った。
「ごめんなさいね、あおくん。この子は孫娘の滝尾夏津。夏津は誰にでも無愛想だから気にしないでね。」
「はぁ、そーなんですか・・・・・・。」
「あ、夏津、あおくんはあなたと同じ15歳なんですって。仲良くしなさい。」
ザワッ・・・
少女にそう言って笑った女将さんの笑顔がなんだかとても怖くて悪寒がした。
少女は驚いたように俺を見た後、女将さんを物凄い目つきで睨みつけた。
「夏津、あおくんを部屋まで案内してあげて。あおくん、今日はお客さんがいないからゆっくり休んでね。」
「は、はい。ありがとうございます。」
そう言って女将さんは廊下の向こうへと消えた。
「着いて来て。」
少女の冷めた声が玄関に響く。
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