4000年彗星

□許して消えて
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想いを告げた。

そしたら微笑んでくれたから。

それまでの迷いも拒絶される恐さも、全部全部なくなったんだ。



と、思ってた。

「うわっ 何だよクラトス」

触れる指。

「動くな。髪に砂がついている」

「あーさっき転んだから」

優しい瞳。

「フ…」

「なっ、なんだよ」

全てが大好きで。

「何でもない」

あれから一緒にいることが多くなった。

あ、いや。いつも一緒に旅してんだけど。

宿の部屋同じにしたり。

今みたいに二人で買い出し行ったりさ。

それはすごく幸せで。楽しくて。心地いいんだけど。

やっぱりみんなからすると、『仲のいい親子』なんだよな。

「おとうさん、まってぇ」

「わかったわかった。転ぶなよ」

声のする方を見ると、まだ小さい男の子がお父さんと呼んだ人の所へと走っていた。

そう。あれが、普通。



「……ぁ」

突然妙な感じに襲われる。

何か自分が悪いことを隠しているみたいな。

これを背徳感…っていうのだろうか。

「ロイド?」

「クラ…トス」

父さん。

どうしてもそう呼びたくなくなったのは、その時からかな。

捩じ伏せたんだ。事実を。

「あの…」

だって俺は、浸かっていたかったから。

このぬるま湯みたいな…安心できる状態に。



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