てのひら稲妻町

□太陽に手を伸ばせ
1ページ/1ページ




「雨…止まないなぁ」

「ああ」

ザアアア

濃い灰色の曇り空。派手な音を立てる雨粒。

河川敷の橋の下で、円堂と豪炎寺は雨宿りをしていた。

「休みの日に、豪炎寺と練習できんのあんまないからさ…楽しみにしてたんだ」

「俺もだ。ここに来てすぐに降り出した…天気予報は外れだな」

ため息をつきながら両手でサッカーボールを弄ぶ円堂を見て、再び視線を空へと戻す。

太陽が全く見えない。コンクリートに反響する騒音にも、だいぶ慣れた。

「明日はできるかな」

「どうだろうな」

明日…日曜日は、チームメンバーでの練習がある。

本当は、雨の中だろうとできる限りの練習はしたいのだけれど、

そのせいで

(キャプテンが)

風邪でもひいたら。

「今日は諦めよう、円堂」

「…はは。やっぱだめ?」

「俺が鬼道に殺される」

「え!?何で!」

「いや…別に」

円堂は鈍いんだ。出来過ぎているくらい。

お前の真っ直ぐさに何人が惹かれていると思っているのか。

…無論

俺も、数に入っている。

「なあ円堂」

「なんだ?」

「明日…」

「ん?」

「ああ…いや、晴れるといいな」

「そうだなっ!」

「!……、」

そうやってただ笑うだけなのに。

一瞬、この曇天も上を走る車の走行音も、なにも感じなくなる。

「…どうしたんだ?」

「どうもしてない」

そして残るのは独占欲。

『チーム練習なんて鬱陶しいだけだ。誰にも触らせたくなんかない』

心の奥から渦巻く影が、そんな台詞を溢れ出させるから。

バサッ。

「おい、豪炎寺?」

それを振り切るように自分の上着を円堂に被せ、ボールを取り上げた。

「貸すから早く帰れ」

未だに降り続ける雨の中をドリブルしながら走っていく豪炎寺の姿を見て、

「ま、待てよ!風邪引くだろ!」

とっさに後を追う円堂を一瞥。

「俺なら心配ない!それと、明日の練習は…でないっ!」

ザアァアアアッ

雨音のせいで声が大きくなりつつ、キーパーのいないゴールにファイアトルネードを決めた。

「はあ!?意味わかんねーって!」

「わかれ鈍感!」

一人になりたかった。そうすればこの気持ちは晴れると思ったのに。



「わかるかよ!お前だけ練習なんてずるいぞ!」

「……」

伝わるはずもない。

「ほらっ!」

円堂はなぜだか豪炎寺の上着を腰の位置で縛って、ゴールの隅に転がっていたボールを投げた。

「……」

豪炎寺は戸惑った表情で円堂を見つめながら、向かってきたボールを胸で受け止め足元に置く。

「よし来い!すっげえやりたい!」

「…その変なやる気のせいで、期待するんだ」

そして再びサッカーボールを蹴り上げた。














曇っているから余計に目立つ。大きな掌を持った小さな太陽。

手始めに、炎のシュートで気づかせてやれ!

俺は、お前が





End.


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ