綺麗だから泥をかけたかった。
「俺が死ぬっつったらお前も死んでくれんのかよ」
「俺は」
「死にたいって、殺したいって言ったらその心臓俺にくれんのかよ」
「そんなのは嫌だ!」
「わかってんじゃねぇか」
透き通っていたから曇らせたかった。
「俺が死んだら、俺が知ってるお前のことを伝えられない」
「は…?」
「口は悪いけど、仲間を大事にしてること。俺を励ましてくれたこと。…トマトが嫌いなこととか、家族にありがとうって言えなかったことも」
「……」
「ここにある、うまく言えない気持ちも全部、ここで終わりにしたくなんかない」
「偽善者が」
「終わりにしたくないから、離れるのも嫌だ」
「お前は」
「っていうのは、おおげさかな」
泥まみれでも笑うのか。そうやってまた、綺麗にして。
そんな奴は大嫌いだ。
End.