てのひら稲妻町

□あらさがし
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綺麗だから泥をかけたかった。

「俺が死ぬっつったらお前も死んでくれんのかよ」

「俺は」

「死にたいって、殺したいって言ったらその心臓俺にくれんのかよ」

「そんなのは嫌だ!」

「わかってんじゃねぇか」

透き通っていたから曇らせたかった。

「俺が死んだら、俺が知ってるお前のことを伝えられない」

「は…?」

「口は悪いけど、仲間を大事にしてること。俺を励ましてくれたこと。…トマトが嫌いなこととか、家族にありがとうって言えなかったことも」

「……」

「ここにある、うまく言えない気持ちも全部、ここで終わりにしたくなんかない」

「偽善者が」

「終わりにしたくないから、離れるのも嫌だ」

「お前は」

「っていうのは、おおげさかな」

泥まみれでも笑うのか。そうやってまた、綺麗にして。

そんな奴は大嫌いだ。

End.


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