てのひら稲妻町

□これいらない
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「雪が降った時、静かだなぁと思って」

「学校から帰って来たら全部溶けて元に戻ってて」

「屋根から水が落ちる音が聞こえるだけなんだ」

「それなら雨でもできるだろ?」

「冷凍庫を使えばアイスは作れる」

「じゃあ何のためにあるのかな」

「何のために落ちてくるのか、わからない」

一面が白だった。高く高く積もったその圧倒的な存在感はただただ静かにそこにあった。指先でつつくと表面のさらさらとした雪が落ちた。音は無かった。

馬鹿。都会の人間はみんなこうなのか?いいや、円堂だけだろう。もしかしたら、言葉遊びの類なのかも。

「何かのためじゃないとしたら?」

「ただの自己満足で、積もって崩れてそれで人を殺してるとしたら?」

「だから音が無いのか!」

「話がずれてる」

風が吹いた。頬に冷たさを感じ、見上げると雪が降り始めていた。晴れ渡る空から小さな雪が落ちてくる。足元の踏み固められた汚い雪に降り積もった。

「もっとベタに考えてみろよ」

「自分の汚い罪を隠すように、音も無く。かっこいい!」

「白いな」

「不動、聞いてた?」

ぷつ。

「…!」

雪の壁に血がついた。

人差し指を顔へと向けると、赤い直線が引かれていて、そこから血が溢れ出ていた。

「わっ!大丈夫か?」

「ああ」

血の跡を見れば白ではなく透明で鋭い氷が顔を覗かせていた。

「最低だ」

「え?」

「お前を傷つけた」

「何、怒ってんの?」

「うん。そのためにここにあるなら―」

円堂がそっと雪の壁を撫でる。お前も切るぞと注意しようとして、その手から光が溢れ出したので止めた。

だんだん。ぐしゃ。

「この世界のどこにもこれはあっちゃいけない」

自称神の手が、雪の固まりをすべて崩してしまった。

砕けたそれはすぐに溶けて消え失せる訳でもなく、先程よりも少し醜くなってこちらを見ているようだった。



執着してくれてる?

好きだから。

そりゃ、どうも。



End.


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