音譜帯の空へ

□夢路
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「シンク、シンク!」

「…何だよアリエッタ」

神託の盾・食堂内。珍しく満面の笑みを浮かべたアリエッタが、シンクの隣に座り朝食を置いた。

「あのね、今日すっごくいい夢を見たの!」

「今日?」

「あれ?んと…今朝?なんて言うの?」

「え…今朝…朝…何だろ、夜?ってそんなことはいい。どんな夢?」

するとアリエッタはぱぁっと瞳をキラキラさせた。

「えっとね、みんなでお祭りに行ったの!」

「お祭り?」

「そう!浴衣っていうむずかしい服着て、色んなの買って、花火も見たんだよ!」

「ああ。浴衣ねぇ…」

想像してみる。

「………」

「いつもは夢ってすぐ忘れちゃうけど、覚えてたんだぁ…シンク?」

「うわっ」

「顔赤いよ?大丈夫?」

「だっ!別に、大丈夫だってば!」

「シンクおもしろい」

「…フン、アリエッタは楽しくても、僕は全っ然楽しくない」

「え?」

「夢の話さ。そんなの嘘の思い出じゃないか」

「……うん…、でもっ」

「今年は何日だったっけな…」

「何が?」

「花火大会」

「シンク!連れていってくれるの?」

「僕が連れてくの!?…みんなで行けば?」

「じゃあ私とシンクと、みんなで!そしたらシンクも楽しくなるよね!」

「……う、…まぁ。ほ、保護者としてね」

「えー…夢のなかでは シンクも一緒に遊んだもん。保護者じゃなかったよ」

「…知らないよ。そんなこと」



もうすぐ訪れる夏。

その夢を現実にしたら、僕達はもうちょっとだけ近づけるかな。

そうやって

来年も再来年も

君と過ごしていけたらいいのにね。



End.


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