音譜帯の空へ

□この想いは残していこう
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なぁジェイド。

俺はこの世界に何を残せたかな。

この先何かを残せるかな。

昨日はやけに星が綺麗だった。

でもあの光はずっとずっと昔のものなんだって、あんたがそう教えてくれた。

何億光年っていう、途方もない長い長い時間をかけて。

やっと届く小さな光。

その間にひとは何度、生まれ変わったんだろう。

そのなかでひとは何度、前世で想いを告げた人に、巡り逢えたんだろう。

(ああでも)

同じ人間に生まれる訳でもないし。

次は動物になってるかもしれないし。

確率なんて出したものなら、きっとほんとにごく僅かで。

だったらもう音素でもいいや。

水でも、風でもいい。

そうして世界中を巡って貴方に会いに行くんだ。



何億光年っていう、途方もない長い長い旅をして、

やっと届いた小さな光。

それに比べれば短すぎる俺達の旅の時間。

それに比べて短すぎた貴方との共有時間。

(ああそうだ)

これからなんてもっともっと短いくせに。

一週間後なんてもういないくせに。

鼻に刺激を感じたら、遥か彼方の星の光が揺れていた。

やっぱり今を生きたいんだ。

来世もその来世もいらないから。

そのほうが、大好きで大嫌いなこの世界の中で一緒に過ごせる。

ずっと一緒に。






















奪って生まれた。

そこで光を見た。

自分は鏡だと知った。

記憶に初めて疑われた。

そんな人間を叱咤して、愛してくれる人がいた。




あの音譜帯の空へ消えたとしても、



End.


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