novel room--long--

□話の分かれ目
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気がついたらそこにいた。
下にはゴツゴツした岩と大きな水しぶき、横にも手すりなんてものはない。
私は何故こんなところにいるのだろうか。
後ろを振り返るとある一線を隔てただけのその先に、広い町並みが見える。
高層ビルの棟棟、空は晴れているのに灰色かかっていて、いろいろのものが渦巻いているのがはっきりと分かる。
そうか、私はこの世界が嫌になって、今ここで全てに別れを告げようとしているんだ。
この27年間、何にもなかった。正直、一日一日が早く過ぎて・・・昨日は何をしたっけ。
明日になったらこんなことを考えていることも忘れてしまっていて、もういい。
安易な考えかもしれないけど、もう別にいいんじゃないかな。
お金は腐るほどあるから、何の不自由もない。でも私の大切な、そして唯一の親類である妹は2年前に、――婚約までしていたのに――事故にあってもう動かないの――犯人も見つからないまま――。だからもう、私に親戚はいないし、
このまま続けていっても結婚するつもりも、ましてや子供を産む気なんてないのだから問題ないでしょ。
無機質な高層ビルを眺めて独り言を呟いて私は元にもどった。そして、一歩踏み出した。
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