読物

□兎
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・・・・今何時なんやろ?
西田と飯食ったんは腹の調子からして・・ああ、駄目やわ。薬のせいで感覚に集中出来へん。頭もぼうっとするし、もうずっと眠っときたいわ。せやけど・・・・・




「ああ、目ェ覚めました?真島の兄さん」
「・・・」
真島はとても不快な目覚めに若干吐き気を覚えた。そして早々に声をかけてきた男を睨〔ね〕め付けた。その睨みは・・いやこの男の視線は本来目が合うだけでもこの男を知っているものならば、蛇に睨まれた蛙の如く立ち竦んでしまう程鋭いものだ。

 しかしその男真島は今、何かしらの標本の様に、両手を繋がれ、無機質な部屋に吊るされている。鎖に繋がれた手首の薄い表面の皮膚は剥け、痛々しくも赤い血と朱色の肉が見える。其はこの部屋で、真島に対して行われた行為が長く酷い事を一目瞭然にした。

睨まれた男…浜崎は、厭らしい笑みを浮かべる。黒く焼けた肌に、眩しい程白い歯がよく目立った。

「真島の兄さん、そんな格好で睨まれても笑えるだけですよ」
「・・・何度も言うけど、お前に真島の兄さんて言われとうないわ」
「ククク・・。良いじゃないですか。ニイサン、あんたの愛しの桐生に言われてる呼び方で」
真島は、
浜崎の笑い声に、まるで湧くように蠢めく蛆虫を目の前にしたかのような、、ぞくぞくとした悪寒を背中に感じた。

「・・・・・(何を言うても無駄やな。どんなんやろうが、俺の反応見て楽しんどる)」

 真島は溜め息をつきながら、視線を逸らした。


ほんま今何時?はあ…めんどくさ。三回もヤッたんやからもうええやろ……… そう言えたらのう。…まあ大悟の為、強いては桐生チャンの為やし。



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