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□おまじない
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おまじない




消しゴムに赤ペンで好きな人の名前書いて、誰にも見られずに全部使い切ったら両想いになれるんだって。

中学の頃女の子の間で流行ってたおまじない。
俺は授業中に思い出してチラリと隣の席を見た。
容姿端麗、スポーツ万能、知的でクールな秀才…
俺の幼馴染みの鎖介。
何時からこんな気持ちに変わってたんだろう?
昔は、お互い泥んこになって遊んでたのに
気が付いたら遠くなって、目で追って居た。
この木ノ葉学園も鎖介が受験するって知って、必死で勉強して…徹夜で鎖介の事を想ってた。

真面目にノートを録って居る鎖介から目を反らして俺は最近使い始めた恋のおまじないを掛けた消しゴムを握った。
少しだけ、切なくなる。
「好き」って言える訳無いじゃん。
男だし…逆にもっと遠くなるって分かるから。


「ねー、鎖介君ってさ彼女居るのかな?」

「知らないゎよ。でも好きな子は居るって噂あるじゃん?」


ヒソヒソと後ろの席の女の子達が話してる声が聞こえた。
無意識に鎖介を見る。
本当なの?それ?
好きな子…俺な筈100%無いょね。
哀しくなって涙が出そうになった時鎖介が俺の方を振り向いた。
じっと見つめられて顔が熱くなる。
俺は直ぐに鎖介から顔を背けた。
昔は目が合ったら笑ってたのに
隣の席だなんて事が合ったら授業中ずっと話してたのに
帰り道、手を繋いで帰った事だってある。
今の鎖介は誰と手を繋いで帰ってるの?
きっと鎖介に似合った可愛い女の子なんだろうな。

「ずっと親友で居よう。」
って言ってたの覚えてる?
俺、もう鎖介と親友だなんてやだょ。
鎖介の「トクベツ」になりたいょ。


「あっ。」


カシャンって音を立てて、机の隅に置いて居たペンケースが落ちた。
バラバラと中身が溢れて、慌てて拾おうと思ったら今度は弾みでバサバサと教科書が落ちる。
何やってんだろ俺。
床に落ちたモノを拾いながら無造作に机の上に教科書を置く。
鎖介の足元に落ちた赤ペンを取ろうとしたら先に拾われた。
俺より大きくて細長い綺麗な指先の鎖介の手に触れる。


「あ、ご…ごめっ。///」


反射して手を引っ込めながら謝る。
普通此所は「ありがとう」なのかな?
鎖介の顔が見れずに椅子に座った俺に鎖介は拾った赤ペンを差し出した。


「ほら。」

「あ…ありがとう。///」


たった一言だけの会話に俺の心臓は壊れてしまいそうな程ドキドキしてて、顔が熱くて俯いた。


「おまじない、ってヤツか?」

「え…?///」


クスリと笑いながら言った鎖介の手には俺が恋のおまじないを掛けた消しゴムがあった。
恥ずかしくてどうしたら良いか分からない俺に笑いながら鎖介が消しゴムにケースを嵌める。
使い切る前に人に見られる所か本人に見られてしまうなんて。
そんな事予想外で。


「それは…、えと……。///」

「予想外?笑」


焦って言い訳を考えてる俺に、鎖介は自分の消しゴムを取ってケースを外した。
渡された白い消しゴムには少し擦り減ってるけど、赤ペンで「渦槙成斗」って鎖介の文字で書かれてて。
「それで3個目」って言われて俺は唯鎖介に飛び付きたい事と涙を堪えるのに必死だった。


「親友は今日で卒業な?」


鎖介の言葉と俺の消しゴムの何も書いて無い方に赤ペンで書かれた文字に俺は授業中だって事も忘れて泣きながら鎖介に頷いた。
恋のおまじないは成功?
それとも失敗?
鎖介の消しゴムに文字を書いて授業終了のチャイムが鳴って号令が掛かった時、俺は鎖介に恋のおまじないが掛かった消しゴムを渡しながら鎖介の広い胸に埋まった。




―end――…





 
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