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□卒業
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卒業




先生、俺……先生の事好きなんだょ?

ずっと俺だけの先生で居て欲しい。
好きな気持ちは誰にだって負けて無い。
気付いて欲しくて気付かれちゃいけ無い。

先生、俺はどうすれば良いですか?






静かな教室の窓から見える放課後の風景。
淡いオレンジの光が見慣れたグラウンドを照らす。

此処からこうして眺めて居られるのも今日で最後。
明日は卒業。

一週間前から近付く度に俺の憂鬱は募っていった。


だって今日が先生と二人きりで居られる最後の日だから……
















「今回の欠点者は一人、渦槙成斗!お前は今日から卒業式迄補習だ。」


事の起こりは一ヵ月前。
学年末……高校最後のテストで苦手な数学の点が思ったよりも悪かった俺は
一人、放課後に補習する事になってしまった。


「えぇーっ?!ι やだってばょ、大学決まってるから良いじゃんか!」


無論、その時は苦手な数学の補習をするなんて最悪で
先生と一対一で勉強なんて考えられなかった。

毎日放課後苦手科目の大嫌いな補習。
始めは嫌で堪らなくてずっと外を眺めてた。

俺の知ら無い此処から見えるグラウンド。
淡いオレンジの光が硝子越しに俺を照らして…


「こら、何ぼーっとしてる?問題解けたのか?」

「先生…。」


顔を上げると、俺の事を真っ直ぐに見る先生が居た。

何時もは厳しくて意地悪な癖に本当は凄く優しいって事、
俺だけが知ってる……。


先生俺ね……先生の事好きだょ?


黒い綺麗な瞳とか、
優しく頭を撫でてくれる俺より大きな手とか全部、
知っていく程好きになる。

でもそんな事思ってるのは俺だけ。
言いたくても絶対に云っちゃいけない。

だって言ったりしたら先生困るから…
生徒で男の俺には先生のトクベツにはなれない。

だけど、もしも先生が俺を好きになってくれたら?
先生のトクベツになる事が出来たら?

たまに考える自分の理想。
そんな事有り得無いって分かってるのに……
どうして俺だけがこんなに好きなのかな?

俺だけがどんどん先生を好きになっていく。
俺だけが―――…






「先生…、俺じゃ駄目ですか?」


俺じゃ先生の一人にはして貰え無い?


「……成斗?」


お願い気付いて、この気持ち。
嘘でも良いから「好きだ」と言って下さい。
その腕で俺を抱き締めて?
強く……つよく…


「俺、先生の事……」


好きです。
誰よりも一番に。

ずっと俺だけの先生で居て欲しい。
生徒じゃ無く、一人のヒトとして見て下さい。

今だけ…
今だけこの気持ちを伝えさせて……


「成斗……。」


今が此処に二人きりで居られる最後の日になるのなら…


「鎖介先生、大好きです。」


どうか、
この想いを……。




―end――…





 
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