長編2

□flower in the center of the world X
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退屈が高じて作ったお菓子の山を眺めて、エドワードはむむぅ…と唸った。

何故か本を読む気分にならなかった為、悩んだ挙句にせっせとクッキーやケーキやプリンを作って暇を潰していたのだが、
二人暮しの家には過ぎる量を生み出してしまったのだ。

元々家事が不得手では無かった事に加えて、今では強制では無く好んで家事を行っている為、料理には少々自信がある。
「好きこそ物の上手なれ」とはよく言ったもので、孤児院時代に比べてメキメキと、急速に上達した自覚はあるのだ。

だから、目の前にある大量のお菓子も食べようと思えば食べられると思うが、そうすると健康面に不安が出てくる。

何と言っても家主のロイは26歳。26といえば四捨五入すれば30だ。
30といえば三十路である。栄養バランスやカロリーに気を遣っても度が過ぎるという事は無いだろう。
そんな、ロイが聞いたら「エド、私はまだまだ若い心算なのだが」と訴えてくるだろう事を考えながら、エドワードは悶々と悩んでいた。

そして以前、ロイへの差し入れにアップルパイとベリータルトを持って行った際に、
彼の部下が一部を強奪して、美味しい美味しいと褒めそやしてくれた事を思い出した。


「えっと、あそこにいるのは…ホークアイ中尉とハボック少尉とブレダ少尉とファルマン准尉とフュリー曹長とブラックハヤテ号……」


ロイの部下の人数とケーキの数と比べて、十分に足りる事を確認すると、エドワードは嬉しそうににっこり微笑んだ。


「そうだ、司令部に持ってけばいいんだ!うん。
 あそこなら多少いっぱい持っていっても、他の部署の人達が食べてくれるかもしれないし、ブレダ少尉は大食いそうだもんな!」


エドワードは余程この案が気に入ったらしく、うんうんと頷いた。
久し振りに司令部に寄る口実が出来たので、ご機嫌なようだった。

ロイに引き取られたばかりの頃は、怪我をしていた為にロイに連れられてよく行ったが、今では軍部の建物が目に出来る範囲にすら近寄る事は稀だった。

ロイは気にするなと言うが、本来一般人であるエドワードは、そうそう司令部には近寄る訳にはいかなかったのだ。
しかし、優しいロイの部下達に会いたい気持ちも確かにある。

エドワードは鼻歌混じりにケーキを箱に詰め、クッキーを袋に小分けにし、大きめの鞄の中に突っ込んで、家を飛び出した。



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Flower in the center of the world X

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