長編2
□回顧
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エドワードが来るなり、近頃元気を失くしていたアルフォンスが明るさを取り戻した事に、ホーエンハイムはほっとした。
同時に、血は繋がっていないのに本当の姉弟のように仲睦まじく、強い絆で結ばれている二人に、微笑ましさを覚える。
楽しそうにくるくると踊りながら会話する二人を眺めていたホーエンハイムは、
森の中を駆け抜けて疲れただろうエドワードの為に夜食の用意をしようと立ち上がり、はっとした。
エドワードの、朝まではいられないという台詞を思い出したのだ。
「エドワード。時間が限られているなら、有効に使わないと。新しい本も沢山入ったし、持っていく物を選ぶといい」
その言葉にエドワードとアルフォンスは慌てて、今はもう照明の落された店内へと駆けて行き、本を物色し始めた。
ばさばさばさと本が墜落していく音を耳にして(商品なのに…)と思わないでもないが、元々道楽で始めた商売であるし、
元が古書であり、内容さえ良ければ本の状態など気にしないという客が多いので、別段の注意はしなかった。
急いでいるが故に、仕方のない事だと思ったのだ。
「俺としては、新しく入った経済学の本がお勧めだな」
ぽつりと言葉を発せば、それはどれだと、二人のぎらぎらした瞳が振り返った。
知識欲の頗る旺盛な、身分は異なるのに、その性質と金髪金眼の容姿はお揃いの天才児二人に、ホーエンハイムは肩を竦めた。
「やっぱり血かな…」
ぽつりと呟くと、どうやら優性遺伝らしい己の容姿と頭脳に、苦笑する。
「エドワード。例え何があっても、お前が嫁に行ってしまっても、俺達は誰よりも家族だという事を忘れるな」
本に集中した二人に聞こえていない事は分かっていても、ホーエンハイムは言わずにはいれなかった。
金髪金眼。そうそう見られない、稀有な容姿。
それと同じように、他に類を見ない、秀逸な頭脳。
似通った二人の子供に、絆を感じない方がどうかしているのだ。
終.