長編2

□誰にでも愛される人
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朝、登校した際に突然襲ってきた眩暈に、綱吉の体はふらりと傾いだ。

予鈴が響く中、風紀委員が遅刻者を取り締まる為の準備を始める姿が視界の端に見える。
そんな奥で、明らかに体に不調を来したという様子で体が傾いた綱吉に、雲雀がひっそりと心配そうな視線を向けてきた。

綱吉はそれを目だけで大丈夫だと制すと、徐に額に手を当てて、唸った。


「なんか体がダルいや………。カゼでもいいたかな…」


ぼやきながら、突然の体調不良の原因を探る。

特に熱がある訳でも無く、異常なほど発汗している様子も無い。
脈拍も心音も正常であるし、動悸も無い。ただ、奇妙な目眩があるだけだ。

首を傾げつつ額から手を離した綱吉は、掌に奇妙なドクロマークを見つけて、ぎょっと目を剥いた。
あまり好ましい印象の抱けない、その奇妙なドクロマークは、異常な存在感でもって掌に鎮座ましましている。

まじまじとそれを見つめていると、突如、どよんとした空気を背負ったリボーンが現れた。


「それは、ドクロ病っていう不治の病だ。ツナ、死ぬぞ」
(いきなり何だ――!!!)

今日初めて姿を現したと思ったらいきなり死の宣告をされて、綱吉は苛立ちながらも、リボーンに詰め寄った。
その最悪な言動を責めると、彼は己には一切の責任が無いといった、常通りの口調で言葉を綴った。


「死ぬ気弾で10回殺されると、被弾者にとんでもないことが起こると言われてるんだ。まさか不治の病とはな…。残念だ」


確かに色々あって、結局10回程死ぬ気弾を撃ち込まれてはいたが、それは一切合切綱吉の所為では無い。
寧ろ、撃ち込んだリボーンにこそ非がある筈だ。
なのに、当の本人は何とも適当な物言いで、綱吉は心底腹立たしくなった。

しかし、これが真実不治の病だとしたら、感染性の有無も分からないまま学校に居るのは危険だろう。

綱吉が体調不良を来した事は雲雀の目にも映っていたし、ダメツナはサボり魔でやる気の無い生徒だ。ここで帰宅の途についても何の問題も無い。


「は――――…。帰る」


綱吉は、体調不良の理由が何にしろ、リボーンの言が真実である可能性も無きにしも非ずだと校舎に背を向けた。


「思ったより冷静だな」
「あたり前だ、不治の病なんて信じるかよ。こんなの洗えばとれるよ」


お前の所為でやる気が削がれたと言わんばかりの態度で歩み出せば、
普段なら「家庭教師の前でサボるたあ、いい度胸じゃねーか」と威嚇射撃されるところを、リボーンはあっさりと見逃した。

その事に、綱吉は益々不治の病説が濃厚になったと、心の中で項垂れた。
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