長編2

□王様達と家来
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草食動物の群れの長が集い、くだらない事をくだらない手法で決め定めていく。
その様子を、一応風紀委員『長』として眺めていた雲雀は、突如己に向けられた視線を感じて、窓の向こうに目を向けた。

不躾に真っ直ぐに向けられてくる視線は、雲雀の力量を図ろうとするかの如く、隠そうという気は見えない。
雲雀は感じる視線を辿るようにして相手の居場所を突き止めると、その方向を睨みつけた。

この視線は、この所雲雀の大事な幼馴染に始終向けられている物と同様のモノだ。

視線の主の所為で、その大事な幼馴染、綱吉との接触がめっきり減ってしまった。
遠慮の無いその視線に、苛立ちも一入である。

その苛立ちとムカツキの原因が己に絡んでくる前兆に、雲雀はどうしてくれようか…と舌舐めずりする。

綱吉はマフィアが介入してくる世界に雲雀を巻き込みたくないと言っていたが、目を付けられたとあっては何もしない訳にはいかない。
あの赤ん坊が直に絡んでくるのか、或いは綱吉を使って何かを引き起こそうとするのかは分からない。
しかし、綱吉と自分に害を齎そうとするものを許容してやる程、雲雀は己が寛容でない事を知っていた。

(あの赤ん坊を始末する大義名分が出来たかな…)

くすりと笑みを浮かべて、向けられる視線を辿る作業を中断する。
背後で自分が所有権を更新し、更に一年拠点として用いる事にした部屋に対して不満を言う声が上がったからだった。


「何か問題でもある?」


目障りな赤ん坊を排除する理由が出来た所なので、珍しく機嫌が良い雲雀は、ゆったりとした口調で不満を上げる理由を問い質した。
しかし、雲雀の機嫌の良し悪しを見極める事が出来る者は今、
この部屋には一人として居ないので、その問い掛ける声が上機嫌に弾んでいる事に気付いた者は誰一人として居ない。

ただ、雲雀恭弥が声を発したという事実に怯え肩を震わせるばかりの、噛み応えも味も無い無価値な人間ばかりだった。


「いえ!ありません!すっ、すいません、ヒバリさん!!」


ただ声を発するだけで怯えて必死に謝罪してくる女子生徒に、雲雀は大した感慨も覚えず、ただ瞳を細めた。


「じゃ――、続けてよ」


そこで漸く、雲雀が普段と比較して、機嫌が良い事に気付いたいのだろう。

今ならば咬み殺されないとでも思ったのか、一部の生徒が群れで、雲雀に敵愾心をぶつけてきた。

その無様さに、雲雀の機嫌は嘘のように反転し、下降した。
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