長編2

□flower in the center of the world Z
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エドワードはうきうきと、今にも鼻歌を歌い出しそうな調子で、路地を歩いていた。
今日は東方司令部が抱える錬金術師との意見交換会が開かれる日だ。つまり、正式な用事で司令部へとお邪魔する事が出来る特別な日なのだ。

国家錬金術師でも軍人でも無いエドワードは本来参加資格が無いのだが、そこは司令官の養い子として特例許可が出た。
本当はロイがエドワードの参加をごり押ししたのだが、それは当然のように当事者であるエドワードには伏せられている。
そういう訳でエドワードは、何も知らず『正当な理由でロイの仕事場に行ける上に、錬金術の話が聞ける』として、今日をとても楽しみにしていた。


「アレックスさんの鉱物錬成の理論も面白いけど、ロベルトさんの治癒錬成も為になるんだよなぁ」


鉱物錬成。治癒錬成。気体錬成。生体錬成。他にも様々な分野の専門家がいて、それぞれが全部、知識欲旺盛なエドワードにはたまらない刺激だった。
一般の人間からしたら一つの分野だけでも根を上げるその研究達を、エドワードは全て理解し、自己の論理を構築し、より深く掘り下げていく。
末恐ろしい幼い天才に危機感と邁進の刺激を受ける錬金術師達を知ってか知らずか、エドワードは毎度楽しげに、月一の意見交換会に参加していた。


「おお、エド」
「ハボック少尉!」


楽しげに歩くエドワードに、偶々巡回中のハボックが声を掛けた。エドワードはすっかりハボックに懐いたようで、少し離れた位置に居た彼へと駆け寄る。
するとハボックは、慌ててまだ点火したばかりと思われる長さの残る煙草の火を消し去った。

別に喫煙していても構わないとエドワードが何度言っても、彼はマナーだ、エチケットだ、ガキの前で吸えるか、と言って決してエドワードの前で煙草を吸わない。
その上エドワードを見掛けると、必ず声を掛け、司令部に向かう時は一緒に歩いてくれて、買い物の時は荷物を持ってくれる上に家まで送ってくれる。

だからエドワードは彼を立派な大人だと、密かに尊敬していた。


「もしかして司令部に行くのか?そうか、今日は錬金術師達の定例会か。お前凄いよな、あんな大人でも分かんねえ難しい話についていけてよ。俺は無理」
「全然凄くないよ、皆俺にも分かり易く説明してくれるから。錬金術を多少かじってれば分かるよ」
「俺錬金術はちんぷんかんぷんだし、っつーか、錬金術がその年で理解出来るってだけで十分凄いだろ。それにあれは東方でも特に高名な錬金術師が参加するっていう会だぞ。軍のお墨付だしな。お前に自覚はないだろうが、お前は色んな意味で凄いんだぞ」


ぽふんと頭を撫でる。エドワードは褒められて擽ったそうに、はにかんだ。
大変可愛らしいが、だからといって構い倒す事は出来ない。それをしてうっかり粗相をしでかそうものなら、ハボックは消し炭になってしまう。

(お前は本当に、色んな意味で凄いんだぞ…)

ハボックは遠い目をしながら、そう思った。

脳裏に浮かぶのはエドワードが手懐けた、悪魔と称される自身の上司、ロイ・マスタングの事だ。

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Flower in the center of the world Z

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