長編

□満足が贅沢
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(恭弥君と遊べない夏休みなんて、全然意味無い)

天才数学者ボリーンだとか、訳の分からない事件に発展しつつもどうにかダメツナのまま解き明かした、
問7が記された補習の課題も終え、綱吉はだらりと机に突っ伏し項垂れていた。

今までは、友達と遊ぶと偽って雲雀宅で楽しくやっていた夏休みだが、
今年は綱吉をマフィアに育て上げようとする人間が常に傍にあるため、ダメツナとしては近付く事を許されない彼に会う事は出来ない。

(何でもいいから恭弥君の所に行きたい)

ダメツナでは到底読めないし買えないような本を、雲雀は平然と購入する。
中学どころか超高校生級でも物足りないほどの知識欲を持っているのだから、当然の事である。

彼と同じく、綱吉だって好きな本を好きなように読めるなら、難解な書物をうきうきと買って歩くだろう。
でもそれが許されないから、彼女は雲雀の購入した本を雲雀の家で読むのが以前の日課だった。

読み得た知識の交感や、日常の他愛も無い話をするだけでも、心は和む。
何故なら、雲雀の前では唯一素のままで居られるのだから。

体を動かすのだって、他の人間じゃ物足りなくても、雲雀となら満足感と充足感が得られる。

毎日毎日、通常学校に通っている間は考えられないほど、朝から晩まで雲雀と一緒に居られるのが、春・夏・冬の長期休暇だった。

これまでの夏休みを思い出して、綱吉は切なげに溜息を零す。


「…なんだ、ツナ」
「別に…。ただ補習と宿題ばっかでつまんない夏休みだったなぁって」
「それが嫌ならちったぁ賢くなりやがれ」


賢さならもう十分に備えてるっての…と、綱吉は閉心を心掛けつつ、思った。

これまでの夏休みは、宿題なんて「ダメツナらしく間違えること」を心掛けながら、一日で終わらせる事が出来た。
ある程度、親に手伝わせる分も忘れずに残して――ではあるが。


「どうでもいいが、オレは明日からビアンキと、3泊4日の避暑の旅に出掛けるからな。帰ってきても宿題が四分の三終わってなかったら、ど突くぞ」


綱吉はその言葉に、ぴくりと反応した。
リボーンの言葉に嘘が無いか勘を研ぎ澄ませて、それが真実である事を確信すると、彼女は心の中でガッツポーズをした。

しかし、恐らくダメツナがするだろう、泣き言を言うのも忘れない。


「ちょっ、無理だって…!こんな量をあと3,4日で終わらせるなんて、絶対無理…!」
「無理でもやれ。じゃねーと…」


綱吉の表面上の言葉に、リボーンはチャキっと銃を構えて、脅しつけるように瞳を鋭く光らせた。

それに怯える素振りを見せながら、綱吉はリボーンが旅行に出る3日間の計画を立てた。
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