長編2
□flower in the center of the world X
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ちくしょう…と漏らしながら、ヒューズが愛娘を探しに行こうと踵を返した、その時。
「大佐、通り魔事件です。シティの西の外れで、女性・子供が相次いで6人刺されました。犯人は未だ逃走中です。早急に手を…」
司令部に飛び込むと同時に、入って来た情報をすぐさま読み上げるホークアイに、ロイは微かな溜息を吐くと、徐に立ち上がった。
明らかに面倒くさそうなロイに付き従うようにして、ホークアイとハボックが付いてくる。
「そういえば、ブレダ少尉は何処に行ったのかしら?」
「昼飯じゃないっすか?確かあいつまだ、飯食って無かったと…あ、戻ってきたみたいっすよ」
司令室を出てすぐに、廊下の向こう側から歩いてくるブレダを視認して、ハボックは立ち止った。
一応事件が起きた旨を伝えようとしたのだろう。
しかし、それを言う前に、彼はある意味とんでもない爆弾発言をかました。
「大佐に中佐、大丈夫なんですか?エリシアとエドの奴、司令部の外に出てましたよ」
どうやら、ロイがエリシアの遊び相手にとエドワードを連れて来たと思ったらしい。
ブレダは、大した問題意識を抱いた様子も無くホットドッグを口に運びながら、言った。
「何!?エドは今、家の外に出ているのか!?」
「何!?エリシアを見たのか!?」
佐官二人に詰め寄られて、ブレダは驚いて目を見開く。
そんな彼にホークアイが、どこを見ているとも知れない瞳で、何とも言えない表情を浮かべた。
「どこで見た!?」
「どこに行った!?」
必死の形相で迫るロイとヒューズに、ブレダの手からぼとりとホットドッグが落ちる。
ヒューズは兎も角、ロイの必死の形相から、何か深刻な事態になりかけている事だけは分かった。
もしもエドワードに何かあったら、
あの子を見つけたのにお前は何をしていたんだ、と燃やされる事請け合いだ。それは御免被りたい。
「あの、これを買った店で。遠くに二人が見えたんで」
言いながら、まだ中に幾つかのホットドッグが入った紙袋を示す。
それを見ても、対して食物に興味の無いロイも、この街に詳しくないヒューズも大した事が分からない。
二人してホークアイに目を向ければ、彼女は若干青褪めた表情で、
「これは…シティ西側に程近い場所にある、店のもの、…で、すね……」
ホークアイが全てを言い終える前に、二人は物凄い勢いで、飛び出していった。
「司令部総出であの子を探せ!いいな!」
走りながら叫んだロイの声が重く響く。それに続いてヒューズが「エリシアもだ!」と叫ぶ。
あまりに素早い二人に一瞬呆けていたハボックも、慌てて二人を追った。
目を白黒させる昼食帰りの哀れなブレダへの軽い説明と、
エドワード及びエリシア捜索を命じる為に、ホークアイはその場に留まり、盛大に溜息を吐いた。