長編2

□安息に向かえ
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男性用の更衣室に入り、ロイの着替えを手にした二人は、
すぐに『マスタング准将』に宛がわれた執務室に移動し、鍵をしめ切って気まずそうに見合った。

一応トイレの件でベルトは一人では外せない事が分かっていたので、先に二人で外しておいたのだが、次にどうすれば良いのか分からない。

暫く無言で見合っていると、唐突にロイが、


「今日ぐらいは、軍服で帰ろうかと思うのだが…」
「駄目だ。元々あんたは顔が知れてんのに、一年前の事件でもうタレント的に顔知れ渡っちまってんだろ。
 ンな奴に手ェ引かれて歩いてたら、目立つ。軍服着てたら尚更だ。
 それに、あんたの手伝いの合間に見た資料でトロイの事は大体理解したから、今日出来る事はしておきたい」


買い物に付き合え…と命令口調で言うエドワードに溜息交じりに頷くと、ロイは彼女の頭に手を乗せて、くるりと体を反転させた。

急に体の向きを変えさせられたエドワードは、「むぉっ?」と奇怪な声を上げる。
疑問符を浮かべて、今にも振り返りそうな雰囲気のエドワードに、ロイは分かっているとは思うが…と注意を呼び掛けた。


「着替えるから、こちらを向くなよ」
「誰が向くか!」


言われて初めて、体の向きを変えられた理由に気付いたらしく、彼女は突如耳まで真っ赤に染め上げて叫んだ。

ロイはそんなエドワードの小さな背中を見つめながら、片手で釦を一つ一つ外す。
意外と手間取ったので、次からは着替える時はベルト共に釦も先に外して貰ってから後ろを向いて貰うべきだな…と次に着替える時の事を思った。


「所で鋼の」
「…何だよっ」


背後から聞こえる衣擦れの音や、掌越しに伝わる服を脱ぎ着する際の身動ぎが恥ずかしのだろう。
エドワードは耳まで真っ赤にしながら、毛を逆立てる子猫のような攻撃的でどこか微笑ましい空気を発しながらロイの声に応えた。

ロイは苦笑しながら、青色の軍服の袖から手を引き抜き、上着をぱさりと床に落とす。
エドワードがびくりと震えるが、それに構わず言葉を続けた。


「買い物って、何を買う気だい?」


その問い掛けに、エドワードは「うん」と頷いて、


「まあ、今日は服を買いにかな。感染者増やしたくないから、なるべく露出の少なくなるようなやつ。
 でも、テロリストに襲われた時、露出少ないと触れるとこ無くて危ないだろ?ただでさえ動きが制限されるのに。
 だから、アウターは昔着てたコートみたいのを探して、中はもうちょい露出の高い物を着ようかなと。襲われた時だけ脱げばいいだろうし」
「…コートに関しては、購入しなくても問題ないぞ」
「え?」
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