長編2
□安息に向かえ
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中央司令部から一番近い衣料品店に入るなり、目に付いた、
多少露出の多い商品を次々購入していくエドワードに、ロイは眉を顰めた。
「君、試着もしないで大丈夫なのか?」
以前の旅から旅への生活では衣服に気を使う余裕も無かったからか、彼女は衣服に一切頓着していないようで、
デザインは関係無く露出の度合いだけを測って購入しているようだった。
着飾れば尚映えるだろう整った容姿も、当の本人には大して価値あるものでは無いらしい。
勿体無いなぁ…と呻くロイに、今度はエドワードが顔を顰めた。
「あ?出来る訳無いだろ、こんな状態で。それとも一緒に試着室に入るか?あんたロリコンの変質者決定だぜ」
言いながら、ロイと繋がれた手をプラプラと振ってみせるエドワードに、ロイはああそうだった…と項垂れた。
「確かにそうだな。すまん」
「分かればいいんだよ。
まあオレも、こんな無駄に服を買う事になるとは思ってなかったから痛い出費な分、ちゃんと選びたい気もするけどな。
こればっかりは仕方無いさ」
「ああ」
諦めの境地らしいエドワードを哀れに思ったのか、ロイも複雑な表情を浮かべる。
彼女はそんなロイ以上に何とも言えない、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべると、心底言いたくなさそうに口を開いた。
「なあ、所で大佐」
「ん?」
「あんた、手ェ繋いで下着買いに行くカップル、どう思う?」
エドワードのこの言葉で全てを理解したロイは、頬を引き攣らせて、
「……ちょっと引くな…。…………そうか、確かに必要だな…」
元々長居する心算の無かったエドワードの手荷物は、これから暫く中央で暮らすという割に、とてもとても小さい。
恐らくそのトランクの中に申し訳程度に詰め込まれているだろう衣服の方も、2,3日分程度しか持って来ていないだろう。下着も然りだ。
いくら第三者から見て引いてしまうバカップルのような行動を取る羽目になったとしても、
「視線や噂が嫌なので、ノーパン・ノーブラで過ごして下さい」とは、口が裂けても言えない。
ロイは、衣服の支払いを済ませ心底嫌そうな表情を浮かべるエドワードと共に、覚悟を決めたようにランジェリーショップへと向かった。
終.