長編2

□背中合わせの幸不幸
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体育祭を翌日に控えているというのに今更始まったA組のミーティングにやる気なく参加していた綱吉は、何故か棒倒しの総大将に据えられてしまい涙を浮かべた。

リボーンも乗り気のようなので、確実に、死ぬ気弾が放たれる。
大変に目立つ、棒倒し競技に用いる棒の上で、下着姿を晒すような事態は何としても回避したかった。


「総大将なんて、絶対ムリだよ――!!」
「そんなの、やんなきゃわかんねーぞ」


涙目で必死に訴えかけるも、「女には優しくする」がモットーのリボーンは、
何故か綱吉だけにはその信条を当て嵌めないらしく、けろりとした表情で言い切った。


「おまえは棒倒しの怖さを知らないからだよ!!」


棒倒しという競技は勝っても負けても総大将が傷だらけのボロボロになるという説明を加えても、リボーンは変わらない表情で「ワクワクする」と宣う。
どうやらリボーンの中で、綱吉は女と言う枠組みに含まれないらしい。
マフィアのボスという立場は男女の枠組みすら取っ払ってしまうらしいと悟り、綱吉は盛大に項垂れた。

(何でオレ、大多数の人間に下着姿晒さなきゃなんない訳。女の子なのに)

雲雀にも無駄に死ぬ気弾を撃たれるなと注意されているのだ。
あんな目立つ位置で撃たれたりなんてしたら、きっと雲雀は怒るし、逃げるに逃げられない。
それに下手をしたら、もしかしたら、悲しい事に、大切な幼馴染に風紀を著しく乱し続けたと嫌われてしまうかもしれない。それだけは嫌だ。

しかし、閉心している為にそんな綱吉の気持ちにリボーンが気付ける筈も無く、結局当然のようにA組総大将として、綱吉は体育祭の日を迎える事となった。
奇跡的に運良く熱症状に見舞われたというのに、ダメツナを演じる上での流れに流されまくった結果、結局体育祭に出る羽目になってしまったのだ。

綱吉は内心項垂れながら、熱症状で普段より重く感じる体で競技に挑み、ぴょんぴょん飛び跳ねて、ダメツナを演じていた。

例によって、雲雀はダメツナ演技を観劇中だ。その楽しそうな視線が憎たらしくて、綱吉はひっそりとギリギリ歯噛みした。

そんな横で間抜けなダメツナを応援している声が上がる。
綱吉はそれに一瞬気を取られ転ぶ――という高等な演技を披露しながら、当然のようにビリになった。何とブービーから1分遅れの最低記録だ。

それは明らかに、演技に集中し過ぎて他の競技者に気が回らなかったが為の、些かやり過ぎなタイムだった。


「君、ビリね」


そうして綱吉は、有名な負け男である為に体育祭委員からも白けた目で見られ、そう告げられた。

おいこらそのあからさまなたいどはなんだ。

そう思いつつも、一応は落ち込んだ素振りで、ビリのフラッグを受け取る。

そんな綱吉の周りで、「こりゃー負けはねーぞ」と言わんばかりにC組の連中が盛り上がった。

熱による眩暈や体調不良の為の精神の不安定さ故か、
普段よりも急速に波立つ精神に焦燥を覚えて、兎に角このムカつく場から離れようと一歩を踏み出した時、


「なるほど、そーゆーわけスか。さすが10代目」


どうやら綱吉を迎えに来てくれたらしい獄寺が、いたく感心しきった様子で頷きつつやって来た。
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