長編2

□鳩と蛇
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視線を下げると、そこには金髪の可愛らしい幼女が、エドワードを窺うようにして見上げていた。

じっと互いに見つめ合っていると、突如少女はにぱっと無垢な笑みを浮かべて、エドワードに抱き付いてきた。


「金色のおひめさまだっ…!」


ふわふわのドレスに身を包み、美しい容貌をしたエドワードをお姫様と称した少女の瞳は、きらきらと輝いていた。
恐らくエドワードを、絵本や童話の登場人物と混同させているのだろう。

その純真な無邪気さに、エドワードは一瞬体を強張らせた。


「〜〜〜っ」


エドワードの周りには、基本的に大人しかいなかった。
(よくこっそり抜け出してはいたけれど)館から出してもらえる事などあまり無かったし、
その館の中でも接触を許されているのは限られた者だけだった。

子供の知り合いといえば、アルフォンスと、その幼馴染で恐らく親友と呼べる存在であるウィンリィ・ロックベルくらいのものだ。
それすらも歳近い存在だったので、これほどに年齢の離れた子供に会うのは初めての事だった。

己を金色のお姫様と呼ぶ、壊れそうな程小さくて可愛い、同じ生き物とは思えない幼女にエドワードはふるふるとうち震えながら口を開いた。


「か…、かわいい〜〜っ!」


思わず幼女に目線を合わせるべくしゃがみ込み、そろそろと手を伸ばしてみる。

赤ん坊のような肌――とはよく言った物で、まだ2,3歳くらいの幼女の肌はすべすべもちもちで、ふっくらしていた。
初めて触る皮膚の感触にエドワードは「ふぉお…」と感嘆の息を漏らしつつ、幼女に徐に問い掛ける。


「お名前は?」
「エリシア」
「エリシアちゃんかぁ…。オ、私は、エドワード」
「エド…ワ、ド…」


舌足らずな口調で己の名前を懸命に紡ごうとするエリシアにエドワードはにっこりと微笑んで、「エドでいいよ」と告げる。

エリシアは嬉しそうに「エドおねーちゃん」と、名を紡げることをさも自慢そうに言った。

エドワードはきゅん!と心臓がおかしな音を立てる気配を感じた。
それと同時に、同じような音が自分の頭上からする事にも気が付いた。

どうやらヒューズは自分の連れて来た幼女の愛らしさに心を奪われたらしく、激しく波打つ感情を表すかの如く身をくねらせている。
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