長編2

□はじめよければ成功同然
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綱吉は、『ダメツナ』時に出来た友人達から誕生日を忘れ去られるだけならまだしも、
母親にさえ自分の誕生日を忘れ去られていた事実に、素で落ち込んでいた。

まさかリボーンの誕生日が自分の前日だとは思いもしなかったが、それでも、せめて母親くらいには覚えておいてほしい物である。
確かにダメな息子(娘)ではあるが、大らかで惚けた所のある母親ではあるが、それでも子供の誕生日くらいは――。

突き付けられた事実があまりにもショックで、怪我の痛みも相俟って、眠りたいのに眠れない。

深夜、真っ暗な病院のベッドの上で項垂れていると、


「やあ」


小さな包みを抱えた雲雀が上機嫌にやって来て、当然のように綱吉のベッドに腰掛けた。


「恭弥君。どうしたの、こんな時間に。何か機嫌良いね」


綱吉はのろのろと顔を上げて、やって来た雲雀に視線を向けた。

如何にも不機嫌を丸出しにして雲雀を見つめれば、
彼はそんな綱吉の態度など意にも介さないようで、「うん」と楽しげに笑みを浮かべて、


「13歳の誕生日おめでとう」
「え」
「君の大事な日に、一番に時間を共有出来て、嬉しいよ」


そう嘯く雲雀の言葉に、そぅっと時計に目を向ければ、時刻は丁度午前0時を指していた。


「君が家に居たら、そんな事無理だったからね。だから、不謹慎ではあるけど、嬉しくてね」


歌うようにそんな事をいう雲雀に、綱吉は盛大に瞳を潤ませて、抱き付いた。


「恭弥君、オレの誕生日覚えててくれたんだね!嬉しいよ!」
「当り前だろう、他でもない君の誕生日だよ。それとも君は、僕の誕生日を忘れるって言うの」
「まさか!恭弥君の大事な日を、忘れるなんてあり得ないよ!」


きらきらした瞳で声を弾ませる綱吉に、雲雀は首を傾げた。

毎年こっそりひっそり、互いの誕生日を祝うのは恒例行事だった。
今年はリボーンやその他の人間が邪魔で出来ないかもしれないと、お互い口には出さずとも思っていたけれど、しかしこんなにも顕著に彼女が喜びを示すとは。

一体何があったのだろうと、雲雀は視線だけで綱吉に問い掛ける。
綱吉は、「聞いてよ、恭弥君」と拗ねたような表情をして、言葉を綴った。


「獄寺君とか山本には、誕生日言ってなかったからまだいいんだけど!リボーンも変なプレゼント寄越してきそうだから別にいいんだけど!
 母さんまで、オレの誕生日をすっかり忘れてたんだよ!?自分が、腹を痛めて子供を産んだ日をだよ、普通忘れる!?忘れるもんなの!?
 オレがおかしいの?普通の事なのか?ねえ、どう思う!?」
「………君の母親は、相変わらず惚けたヒトなんだね。まあ、意外と忘れたふりだったり」
「しないよ、あれは本気だったね。本気の目だった。『すっかり忘れてたわ…』とか言ってたし」


だから、恭弥君がオレの誕生日を忘れないでいてくれて、本当にうれしい!と涙を零しながら言う綱吉を、雲雀は困惑した表情で、見つめた。
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