長編2

□Flower in the center of the world Y
2ページ/6ページ

駆けつけてきたロイが目にしたのは、凄惨足る状況だった。
いきなり男にナイフで刺されたのだという女子供を目にして、愛しい子供の安否に不安が募る。

それはヒューズも同じようで、顔を真っ青にして、傷を負った市民達を見遣っていた。


「大佐、俺達は取り敢えず、負傷者の治療と保護を」


犯人拿捕の指揮を取れと言う部下に、凍りついてしまったかのように青褪めてフリーズしていたロイは我に返ると、急いで憲兵達を走らせた。
犯人の捕縛と同時に、エドワード(ついでに一緒に居るだろうエリシア)を見かけた際の早急な保護を命じると、自らもそこかしこを駆けずり回る。

視界の中に懸命に金色を探すロイに倣って、部下達も必死の形相で周囲を見回す。
しかし、この騒ぎの中、大人顔負けの頭脳を有しているという金色の子供がそう分かり易い所に居る筈も無い。


「エドワード…!」


ロイがじりじりとせりあがってくる焦燥に唇を噛み締め、愛し子の名前を思わず零したその時。
数十メートル離れた場所で、凄まじい錬成反応が巻き起こった。

青白いその光に一瞬目を眩ませるが、それだけの反応を起こす程の錬成が出来る人間などそうはいない。
ロイはすぐさま発火布を手に、その場所へと駆けだした。



まず目に入ったのは、錬金術による物であろう横穴の空いた、小さな交番だった。
錬成陣が見当たらない事から、それをやった人間がロイのように錬成陣の描かれた媒体を用いるタイプの錬金術師か、
あるいは錬成陣無しで錬成できる錬金術師――エドワードである事が推察できる。

その交番を通り過ぎると、今度は変形した道路が目に入った。

防御癖と思しき壁がぽこぽこと乱雑に発生していて、視界にうるさい。
しかしある一点でそれが止まっており、その地点には小さなドーム状の物体が鎮座している。

ロイは周囲の状況に呆然としている部下達を放置して、その場所へと走った。
ドームの程近くには、警戒するようにしてそれを睨み付けているエドワードが、エリシアを背後に庇うようにして蹲っていた。

物体の影に隠れて見えなかったエドワードを視界にとらえた瞬間、ロイは「エド!」とらしくも無く声を張り上げ、その安否を確認した。

エドワードはロイの姿を確認するなりほっとした表情を浮かべて、次いで真っ青になっておろおろと、恐らく彼がやったのだろう道路の惨状を見回した。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ