長編2

□臆病なライオン
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今後地震の危険度はなくなったと判断されてから、炎真達集団転校生は子門中学校へと戻っていった。
折角仲良くなった所だったけれど仕方ない。学校が離れたって結ばれた絆は確かなものなのだから、この友情は永遠だ。
大親友となったボンゴレ・シモン両ファミリーのボスは手紙とメールにて頻りに連絡を取り合っていた。

まるで遠く離れても手紙で友好を温め合った初代達みたいだね、と笑い合う、和やかな日々が続いた。
マフィアの抗争も妙な事件に巻き込まれる事も無い、騒がしくも穏やかな毎日が続いた。


―――あの転校生が来るまでは。


その日。綱吉は妙な胸騒ぎを覚えて、目を覚ました。
夢を見ていたのだ。酷く恐ろしい夢だった。思わず飛び起きてしまう程に。
けれど目を覚ましたら、その夢の内容を全然覚えていなかった。

超直感を持つ綱吉の夢は、時に危険を知らせてくる事がある。今回の夢はそういった類のものであった気がした。
けれど、予知夢かもしれないその夢の詳細はどうしても思い出せなかった。ただ言い知れない恐怖だけが押し寄せてきて、怖かった。

必死に夢の内容を思い出そうとしていると、綱吉を起こしにきた母がやって来て、あらっ?と目を見開いた。
綱吉が叩き起こされる前から目を覚ましているのは珍しい事だ。

「ツっ君、おはよう。今日はちゃんと自分で起きられたのね。偉いわ」

ご褒美に今日の夕食は大好物を作ってあげるわね。
にこにこにこ。優しく穏やかな笑顔が向けられた。
何故か綱吉は泣きそうになった。これが見納めだ――と、心の中の誰かが告げた。

脳内で警鐘が鳴り響いていても、それでも学校には行かなければならない。サボるなんてあの家庭教師でありヒットマンであるリボーンが許す筈が無い。
綱吉は渋々ベッドから降りて登校の準備をした。そしていつもは遅刻ギリギリだけれど、折角早く目が覚めたのだからと、余裕を持って家を出た。

普段どれだけの時間を表で待っているのか、獄寺は既にそこにいて、おはようございます!十代目!と声を上げた。

「そういや今日は転校生が来るらしいですよ!女共が噂してました」

獄寺のその言葉に、綱吉の心臓が大きく跳ねた。

悪夢を見た。もしかしたら危険を知らせる予知夢かもしれない。それを見たその日に来るという、転校生。嫌な予感しかしない。

表情を強張らせながらも、綱吉は獄寺に問い掛けた。

「転校生?…うちのクラスに?」
「さあ、そこまでは。でも、2年らしいんで、可能性はあります」

その言葉に、綱吉は確信した。

嵐が来る。何かの終わりが今日、始まる――。
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