長編2
□臆病なライオン3
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最近ツナ君からの手紙が来ないなぁ…と、寂しく思っていた炎真は、アーデルハイトから封筒を差し出され顔を輝かせた。
日蔭者のシモンに手紙をくれる者は少ないから、綱吉からの手紙だと思ったのだ。
炎真がずっと親友であり同士である沢田綱吉からの手紙を心待ちにしていた事を知っているアーデルハイトは、
複雑な表情でそれを見つめて、そっと今日ポストに入っていた手紙を手渡す。
「炎真、これは雲雀恭弥からの手紙なんだけれど…」
途端に炎真は目を見開き、不思議そうに封筒を見つめる。
一体どうして?という風に首を傾げつつ、差し出されたシンプルな封筒を検分した。
宛名は古里炎真、差出人は確かに雲雀恭弥となっている。
しかし、あの恐ろしい、親友・綱吉の雲の守護者との関わりなんてそれ程無い筈だ。
それ以前に彼が何故子門での自分達の住所を知っているのか。
怖くて開ける事も出来なくて、只管固まって封筒を見ていた炎真はふと、ある事実に気が付いた。
「これ、名前は雲雀恭弥になっているけど、ツナ君の字だ!」
見慣れた親友の字。間違えるはずが無いと、炎真は気が付いた瞬間に急いで封を開けた。
態々差出人を偽る理由は分からないが、何か理由があるのだろう。
ボンゴレ10代目たる沢田綱吉の名前を使えない状況とは…と、不安になり、急いで手紙を取り出す。
中身もやはり綱吉の字で記されており、炎真はほっと息を吐いた。
そしてゆっくりと、手紙の中身を読み進めていく。
「…!」
手紙を読み進めていく毎に常に穏やかで温和な炎真の表情が強張り、怒りの形相へと変遷していく。その様を見て、ファミリー達は目を見張った。
「アーデル」
「どうしたの、炎真?」
「並盛へ行く」
「え?急にどうしたの」
「ツナ君を助けにいく」
D・スペードの謀略解決以降は本来の穏やかで優しい炎真に戻っていた。
それが手紙を読んだ瞬間に険しい表情で、ボンゴレ10代目を助けにいくと言う。
一体ボンゴレに何があったのか、手紙に何が記載されているのか。
アーデルハイトは不躾かとは思いながらも慌てて炎真の手から手紙を抜き去り、その中身を読み込んだ。
『エンマ、元気かな?この手紙が届くといいんだけど。
オレの名前でエンマに出した手紙は全部ボンゴレの権限で郵便局に差し止められていると聞いたので、ヒバリさんの名前を借りたんだ。もし混乱させていたらごめんね。
実はオレは今、不思議な転校生のせいで守護者のみんなに裏切られて、みんなオレを悪者だと思ってるんだ。
それでね、半年分のエンマへの手紙が届いていないって聞いて、心配してるかなと思って急いでこの手紙を書いたんだ。
しばらくは、オレへの手紙は出さない方が良いと思う。
リボーンたちに変に疑われたらエンマたちにも迷惑をかけてしまうから。
オレはもうだれにもオレのことで迷惑を掛けたくないんだ。
ごめんね、変なこと言って。
あ、そういえばヒバリさんもエンマに何か言いたいことがあると言っていたんだ。2枚目はヒバリさんからの手紙だよ。
よく分かんないけど、読んでくれるかな。』
綱吉からの手紙である一枚目も、裏切り、ボンゴレに手紙を差し止められる、などといった驚愕の記載がされていたが、次いで捲った二枚目。
雲雀恭弥からの手紙を読んで、アーデルハイトも目を見張った。