過去拍手部屋
□月夜に何を思うのか
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◆お礼文◇
「みて、兵ちゃん!いやぁ、絶景かな絶景かな。」
「うるさいよ馬鹿旦那。」
「月夜にはやっぱり美人と酒だよな!」
「人の話聞いて無いだろ。」
山奥の高い木から見る月は学園から見た月よりやけにムカついて、ああ、とうの昔に月あかりを敵にまわしたんだとぼんやり思った。
ギシっと音がして、みれば団蔵がものすごく近くに飛び移ってきていた。
「これで酒があれば最高なんだけど。」
僕の顎に手を添える団蔵は、いつも通りの字が下手で力だけはある大雑把な団蔵だった。
「近いんだけど、エロ馬鹿、」
旦那、という言葉は何処かに消えた。だって団蔵の口が僕の口を塞いだんだ、仕方ないだろう。
一瞬の口付けの後には強く抱き締められる。耳元に、団蔵の口が当てられる。
「…5人…いや6人いるな。」
「うん…」
もう、団蔵の口を塞ぎたくてたまらないんだけど、強く抱き締められて、無理だった。
「密書を持っているのはお前だ、だから、俺が引きつける間に、少しでも遠くへ。」
「…団蔵は」
「今日は月が出ている。2人で行った方が危険だ。木陰を頼りに、兵太夫だけでいくんだ。追手は俺が撒く。しばらくしたら山小屋にでも隠れて、夜明けをまつんだ。」
くそくそくそ。そんなこと、わかってるよ。
こんな月夜のせいだ、そう言い聞かせて、緩んだ団蔵の腕を掴んで、団蔵の口を塞いだ。
「「!」」
「兵ちゃん…」
「待ってる。必ず帰れよ。実験台がいなくなるのは困る。」
追手が動く気配を感じ、2人同時に散る。
月夜に何を思うのか
いつか、一緒に見ようかな。
‐END‐