story‐室町‐

□久しぶりに、ちょっと
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「先生ぇ〜。」

「なんだきり丸。」

夜の職員長屋に訪れたきり丸を、半助はしかることもなく迎える。

「一緒に内緒やりましょう!」

「断る。」

なんで!と拗ねるきり丸を半助は苦笑いで眺める。2人で過ごす忍術学園での夜。1年生の頃は小さいながらも夜更けまでここで作業し、途中で寝てしまっていた。普段からベッタリ、というわけではないが、よく一緒にいる2人はたまに夜に会っている。

「わざわざ山田先生が留守の時にこなくてもいいじゃないか。」

「違う。たまたまですから、変なこと考えないで下さいエロ教師。」

きり丸はふんッと偉そうに顔を背けつつ造花を作り、もうすぐ二つ目の内職の簪作りにとりかかろうとしていた。

「エロ教師はないだろう。今だってお前達のテストの採点をしているんだぞ。…相変わらず酷いな。」

「へーん!今日の実技は完璧だったんで今は何聞いてもヘコみませんよ。まぁいつだってヘコまないっすけど。先生もかわいいって前は言ってくれましたよね、1年生ぐらいの時。」

えへへ、と八重歯を見せるきり丸を半助は見つめる。
今日は山本シナ先生が女装のテストをしたはずだった。間違なく優秀な成績だったろう。
低学年の頃からかわいい女装をしていたが、今はスラリと長い手足に白い肌、長い睫毛に豊かな黒髪。そして華奢な身体。危ない商売にかけるならすぐに高値がつくだろう。
半助はそこまで考えて、不思議そうに自分を見るきり丸に気付いた。

「…まぁ、女装もほどほどにな。」

「…兵太夫とかも綺麗でしたけどね。」

なんとなくぎこちない空気が流れる。しばらく二人はそれぞれの作業に集中した。

「よし、じゃあ手伝おうか。」

採点を終えた半助は、きり丸の内職を手伝おうと申し出た。既に簪の内職に入っていたきり丸は丁寧に半助に作り方を教えた。

「この飾りは三つくらいにしてください。あとこの細いのはこっちの横に。」

「ほー。つけすぎてはいけないんだな。」

「はい、みんな同じに作らないと。」

半助に見せながら説明するきり丸の手をみると、意外と細かい傷跡があるのに気付く。

「この傷、どうしたんだ?」

「え…」

愛しい子が怪我をしている。忍者になるための忍術学園にいる以上、ある程度の傷がつくのは当たり前だ。ぎゅっと細い手を握りきり丸の返事を待つ。

「久しぶりですね。」

返ってきた答えになっていない返事に半助は驚く。



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