お題部屋
□恋に気が付く10のお題
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利吉が変態っぽい利こま
…ー今日もどきどきしています。
「相変わらずぼーっとしているね。」
「ほぇ?」
プリントを持って廊下歩いていたら、急に後ろから声をかけられた。
「ほぇ?じゃないだろ!ほら、入門表に書いておいたぞ!」
「…あ、ありがとうございますぅ。あと痛いですぅ。」
入門表にいつの間にサインしたのかわからないけど、それでバシンッと頭を叩くのはやめてほしい。
「これぐらいのたんこぶ、いつも自分で作っているだろう?早く仕事をしたらどうだい。」
あきれたように言う利吉さんを見上げる。
あぁ、お久し振りです。また、怪我をしたんですね。痛くなかったですか。恐くないんですか。ご飯をちゃんと食べているんですか。
あー、何も言えない。声に出せない。
「このプリント、どこに渡しにいくのだか、忘れてしまいましたぁ。」
「父上の部屋だッ!君が遅いから、私が君を迎えに行けと言われたんだ!」
そうだったそうだった。
「利吉さんが来たから、忘れてしまいました。」
だって、突然だったのだもの。
「そうかい。」
利吉さんは優しく笑って短く答えた。
利吉さんは、僕の心の声が聞こえてるのだろうか。
「ずるい…です。」
「ずるい?」
僕の髪を撫でながら、利吉さんは聞き返す。山田先生の部屋はここから遠かったっけ?
ばくばくうるさくて、考えられない。
「そうです。突然現れて、怒って、今みたいに、急に優しくするんです。」
「どきどきしちゃうじゃないですか。」
僕は半分涙声になっていた。
涙を拭こうとして、プリントを落としてしまう。
「小松田くん。」
利吉さんがプリントを全部拾ってくれた。
渡された時に手が、触れた。
「…参ったな。」
利吉さんが、顔に手を当ててうなだれる。
「利吉さん、赤いです。」
「言わなくていい。黙っててくれ。」
微熱をともなう手と心
「利吉さんもどきどきしますか?」
「してるよ、君といる時には余計にね。」
「えへへ。」
‐END‐