story‐室町‐
□あしたの天気
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「…すいません、よかったらこの傘いただけませんか?」
「かわいいお嬢さんだねぇ、2文でいいよッ!」
「ありがとうございます。」
にこっと照れ笑いをする少女に、店主の頬も緩む。
「はよお帰り、雨振りそうやし、暗くなったらおっかない人もでてきはるよ。」
夫婦なのだろう。奥さんも本当に心配そうな顔で一言つけたす。
「はい、用事も終えたのですぐ帰ります。」
さようなら、と小さく手を振り店を出る。
「…やけにかわいい子やったねぇ。」
「本当に、ここらでは見掛けない子やねぇ。」
「きっと、もうしっかりとした嫁ぎ先も決ってるに違いねぇや、あんなべっぴん。」
ふふふ、
噂されている当の本人三反田数馬は、浮かれていた。
今日の課題は本当完璧!…女装が全く見破られないのもちょっとやだけど……だって着物と髪型だけで、お化粧だってほとんどしてないのに……。
「早く帰って、作ちゃんとこのお団子食べ…」
きゃあぁぁ!!
ん?
数馬が声の方へ行くと、いかつい男どもと、そいつらに手を引っ張られてる女の子。
何もなく終わるわけない、僕は不運な子なんだから。