短編小説
□青い鳥
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――痛い。寒いよ……。誰か、助けて――。
空が泣いているのか、と思える程の雨空の下。一羽の鳥が地面に横たわっている。
泣き声は掠れて弱弱しく、今にも命の灯りが消えてしまいそうだ。
傷付いたその鳥を、一人の若い男が見つけた。年齢は二十代後半だろうか。背が高く、すっきりとした目鼻立ちをしている。
男は泥と化した土で震える鳥を、そっと手の中に包んだ。
「ああ、翼が折れているのか……。かわいそうに。痛かったろう」
労わるように告げられる声。男は鳥を優しく撫でた。鳥は応えるように鳴き続ける。
体躯は雨水で濡れていた。骨が折れているのか、翼は曲がり何とも痛々しい。
男は鳥が落ちないよう、しかし翼が痛まないように白衣の懐に入れた。
――暖かい……。
体中に染み込むような心地良い温もりを感じる。鳥はうっとりと目を閉じ、男に身を任せた。