黒猫の航海紀

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どうしてこんなことになっているんだろう。


全くもって理解出来ない。


担がれた姿勢のまんま、離れた地面を睨み付けて考えても答えなんて書いてない。

落ちてもない。



ちらりと横を見れば、何故か白熊がオレンジのつなぎを着て二足歩行している。

これは可愛いから許す。

その隣にはペンギンと書かれた帽子を被った人もいる。


これもギリギリ可愛いから許す。



基本、可愛いものは許される。許すしかない。


―――――でも。





「ねぇ、貴方だれっすか?」

「知りたいか?」

「そりゃあ、まぁねぇ。だって誘拐されてるんだし」


自分をいきなり肩に担いで、悠々と誘拐したこの男はちっとも可愛くない。

だから、許されない。


それ以前に、誘拐が許されないだろう。


「自分誘拐しても、お金とかは手に入らないっすよー?」

「だろうな。とてもお嬢様には見えない」

「だったら離せよヒゲ」

「無理だな」

「なんで?」

「好みだ」


はぁぁ?と首を捻っても、後ろ向きに担がれていてどうがんばっても顔じゃなくて顔は見えない。

だから男の顔はまだ見てない。
解るのは担がれる寸前に見えた髭と偉く濃い隈。

今はもこもこした帽子しか見えない。


「だから好みなんだよ」

「一応聞いてあげましょうかー?・・・・・何が?」

「当ててみろ」

声で解る。
この男、今絶対にやにやしてる。


「顔・・・じゃないっすよねぇ。帽子で見えないだろうし。んーと、声とか手とか足とかっすか?」



「・・・まぁ近いな」

「近いってことは合ってはないんだ・・・」

「あぁ」

「いい加減言えよ、この誘拐犯ヒゲ男」

男がふっ、と笑うのが分かった。
あぁ、歩く白熊が可愛いなと思った。










「体つきだな。スタイルだ。スレンダーな辺りが俺の好みだ」










男の帽子を奪い取って地面に投げ捨てたら、そんなに喜ぶな、と言われた。





あぁ、どうやら自分は変態に誘拐されてしまったようだった。













白熊と誘拐犯

ドンマイ自分










END

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