近道
□誤解
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楓は今、佐助とともに湖まで来ていた。
理由はあまり必要ないのでここでは割愛させて貰いたい。
(だって、楓の一言を佐助が勘違いしてしまっただけ。)ちなみに今の時刻は酉六ツ半時(つまり今で言う19時である。)
空はすでに付きが上り、七日月が真南から少しずれた所に見えていた。
湖に来るまでは佐助に抱えられて来た。
月や星の光に当てられた湖は綺麗で、着いてすぐ楓は湖の淵に座り込み、そのままずっと眺めている。
そんな後ろ姿を見ていた佐助はゆっくりと隣に座り、笑みを浮かべた。
「ね、ここ綺麗でしょー。」
「はい、とっても。」
「アハ、気に入ってくれたなら俺様うれしー。」
楓はこちらを見ないが、それでも嬉しそうな声音に言葉を返した。
佐助はいきなり立ち上がれば、そのまま気にせずに湖へ入ってしまった。
そんな佐助に楓は驚いて立ち上がったが、佐助が手を水中に入れ、それを上げた所為でできた飛沫に楓は慌てて顔を手で防いだ。
「佐助様!何するんですか…。」
「んー?冷たくて気持ちいいよ?」
楓の言葉にへらへら笑いながら言う佐助に少し脱力した様にも見えたが、すぐに着ていたものの裾をたくし上げれば、同じように湖へ入っていった。
(言ってもそこまで深くなく脹ら脛が半分くらいつかる程度だが)
「ちょ!何してんの?」
「言ったのは佐助様です。」
声を上げる佐助にあっけらかん、とした風に言えば楓は大きく足を振り上げた。
当然の様に水に入っていたので足とともに水まであげられ、それは目の前に居た佐助へかかってしまった。
油断していた佐助ははそれにかかり、目を見開いていたが、すぐに笑みを浮かべて、水をあげた。
楓も負けんとして同じように水をあげた。
数回繰り返すうちに疲れたのか、足は着けたまま淵へ座り込んだ。
そして二人は顔を見合わせれば笑みを浮かべた。
「ふふ、久々です、こんなに遊んだの…。」
「俺様も。うん、結構楽しいねー。」
「そうですね、でも結構ぬれましたねぇ。」
ひょい、と髪を一房あげて言う楓に佐助は改めて楓を見た。
「わ…ホント…(調子乗りすぎたか?)」
びっしょり、と言うほどでは無いが、ぬれて重みを持った着物に佐助は手を添えた。
「これ、脱いだ方が良いよ?乾くのそっちのが早いし…それに重いでしょ?」
「そうですね。」
楓は今日は三枚を着込んでいたので特にぬれた一枚を脱ぐことにして、
帯を解こうとしていたが、如何せん水を含んだ帯は思うようにほどけずに、苦戦していた。
「佐助様、佐助様。」
「ん?なぁに?」
「あの…帯が…。」
「帯?…あ、ハイハーイ。じゃぁちょっと後ろ向いててね。」
どうやったは知らないが、佐助はすでにぬれておらず(ここら辺はやはり割愛と言うよりはbasaraだから、だろう)
楓の帯を外し始めた。
やはり少し苦戦をしていたが、しゅるり、と少し音をさせて佐助の手に落ちたそれに後ろから重みを帯びたそれを方から外そうとした…。
「何をしているっ!」
そのとき、丁度後方に有る木の上あたりから怒声が聞こえた。
その声に佐助は口元を引きつらせて、ため息を。
楓は何事か、と目を見開いた。