過去拍手SS

□Mother's Day(銀魂)
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「あの……姉上……」

 日曜の昼下がり、妙は座敷でお茶を啜っていると、ふいに弟の新八に声をかけられた。

「あら新ちゃん、どうしたの?皆さんもお揃いで」
 見れば万事屋の三人が揃ってそこにいる。

 新八は顔を赤らめているし、神楽は何やら嬉しそうにニコニコと笑っている。
 銀時だけはいつものように死んだ魚のような目をしているが。

「これっ、日頃の感謝の気持ちですっ!!」
 新八はそう言って大江戸スーパーのビニール袋を差し出した。

「何かしら?」
 妙がそれを受け取り、中身を確認する。

「あら!! ダッツがこんなにたくさんっ!!」
 中にはいろんな味のハーゲンダッツが10個は入っているだろうか。

「今日は母の日ですから」
 新八はモジモジとしながら言った。
「母の日?」
 キョトンと首を傾げる妙に新八は言った。
「母上のいない僕にとって、小さい頃から姉上は母上みたいな存在でしたから」
「新ちゃん……」
 微笑みながらそう言う新八に妙は胸が熱くなる。
「私もそうネ!! 姉御はマミーと同じネ!!」
 神楽は身を乗り出した。
「ありがと神楽ちゃん。こんな大きな子供持った覚えはないけれど嬉しいわ」
 妙は神楽の橙色の髪の毛を撫でてやると、神楽は嬉しそうに笑った。

「俺ァ、自分より年下で貧乳の母ちゃん持った覚えねえんだけどよ、コイツらがどうしてもって言うからよ」
 面倒臭そうに頭を掻きながら銀時がぼやく。

 すると、

 ドカッ!!

「あら?私もこんな銀髪天パの駄侍を子供に持った覚えはないわ」
「ずびばぜん……」
 畳に顔をのめり込ませた銀時の頭を、妙は微笑みながら更に踏みつけている。

「でも嬉しいわ。母の日のプレゼントなんて」
「年齢のそんなに離れていない姉上に母の日なんて失礼かと思ったんですけど……」
「いいのよ新ちゃん。本当に嬉しいわ」
 自分も新八に親代わりのつもりで今までやってきた。
 それがちゃんと伝わっているようで、とても嬉しかった。

「ま、母の日なんて一生縁がねえかも知んねえからな。よかったんじゃね?」
 お茶を啜りながら銀時は意地が悪そうにその口角を上げた。
 そんな銀時に妙は小首を傾げる。

「あら?銀さんの方が父の日に一生縁がないんじゃなくって?」
「いいや!!俺はいっぱいの孫に囲まれて一生を終えるんだよっ!!」
「銀髪天パの孫がわんさかですか?それは見ものですね」
「俺ァ遺伝子捻じ曲げてでもストレートの子供作るんだっ!!」
「どう頑張っても銀髪はともかく天パは捻じ曲がりそうになさそうですけど?どんなにストレートの方と子供を作ったとしても、あなたのその天パの遺伝子だけはその根性と同じようになかなか矯正できないんじゃなくって?」
「なんだとっ!?お前の遺伝子なんか、どんな強力な遺伝子も食っちまいそうだけどなっ!?」
「さすがに私の遺伝子でもあなたの遺伝子には敵わないわよ」
「ああんっ!? お前の遺伝子は俺の遺伝子を食えるな!! そりゃもう俺の遺伝子はどこにいっちまったってくれえな!!」
「いいえ!! あなたの遺伝子の方が私の遺伝子を食べてしまうわっ!!」

 ギャアギャアと何やら向きになって言い合う銀時と妙に、新八と神楽は嘆息する。

「……途中から何かすごい話になってない?」
「新八ィ、赤飯炊く覚悟した方がいいんじゃないアルカ?」
「……絶対に許さないよ……」
「ちっさい男ネ、いまどきシスコンは流行らないネ」
「どこがっ!?」
「どこもかしこもアル」
「はあ!? とにかくねっダメだからねっ!!」
「ダメダメうっせーぞダメガネッ!! だから新八はダメガネアルヨ!! お前のポジションはメガネアルッ!!」
「はあっ!? もうダメガネにツッコむ気ないけどポジションメガネって何っ!? それ僕の付属品だよねっ!? てかもう既に人じゃないよねっ!?」
「だから新八はダメガネアルヨ。新八のメガネじゃなくて新八がメガネアル。いや、メガネが新八アル。そんなことも気付いてないダメガネは酢昆布30個の刑ネ」
「メガネが僕ってっ!? 意味わかんないしっ!?」

 あちらでギャアギャア、こちらでギャアギャア。

 いつも以上に賑やかな、志村邸の五月の第二日曜日。


 end

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