お題・英単語
□frown-しかめっ面をする-
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「すっごい眉間の皺」
ブルマは唐突にベジータの眉間を指して言った。
「……うるさい」
今のベジータは機嫌が悪い。非常に悪い。
いつも眉間に皺を寄せているような男ではあるのだが、今日は特にその皺が深いように思う。
「何?今日は一段と機嫌悪そうね。なんかあった?」
「……」
「話したくないかあ」
無言を貫きたいらしい。
「ま、理由はわかるけどねえ」
「なら聞くなっ!!」
「あ、喋った」
楽しそうにケラケラと笑うブルマにベジータは思わず気を高めそうになった。
「ゴメンゴメン。ま、仕方がないって。そういう年頃なんだから」
涙が出るまで笑ったブルマはその涙を拭いながら言った。
「……フン」
しかめっ面のままそっぽを向く。
「しかしまあ、アンタも一端の父親だったわけだ。何か安心した」
「何がだっ!? ブラのヤツ、今頃つまらん男とっ!!」
今日は娘のブラがどこの誰とも知れない男と出掛けているらしい。いわゆるデートだった。
意外にも娘に甘いベジータは気になって仕方がない。
「何かあったって大丈夫よ。だってブラはアンタの子よ?パンちゃんみたいに鍛えてないけど、まあそのへんの男なんかより強いんだし」
「そんなことはわかっている!! だがそういう問題じゃないっ!!」
完全に不機嫌を露にしているベジータにブルマは苦笑した。
ベジータは息子のトランクスには厳しいくせに娘のブラには何だかんだ文句を言いながらも言うことを聞く。
そのお陰……というかさすがブルマの娘というか、その性格は少々我が侭で抜け目ないところが見受けられたりもする。
見た目も幸いにも若い頃のブルマにそっくりで、やはり男にモテたりもするわけで。
そうすると父・ベジータの心配は尽きない……ということで。
まあ少しでもブラに近付く男がいればベジータが無言の圧力をかけて男供を追い払っているのだが……。
するとブラがキレた。
『いい加減にしてパパッ!! パパがそうやって睨むから私のボーイフレンドがみんな怖がって逃げちゃうのよっ!!』
握り拳を作り、母親によく似た瞳を吊り上げて、ブラは父に訴えた。
『何がボーイフレンドだ。子供が何を言ってるんだ』
相も変わらず鋭い目付きで凄むも愛娘には全く効果なし。それどころか反論に出る。
『もう子供じゃないわよっ!! 16よっ!!』
『十分子供だ』
『あら?私がブラくらいのときにはもうドラゴンボール探しの旅に出たけど?』
『貴様は余計なことを言うなっ!!』
などというやり取りを今まで何回かは繰り返しているのだが……。
それにしても意外にもベジータは心配性だ。
ブルマの父が寛大すぎるのか、寛大というより何も考えていないのではないかと思うほどの人物だ。
娘がたった16歳でドラゴンボール探しの危険な旅に出ても、ボーイフレンドを連れて帰っても、それどころか侵略者を家に住まわせても、その侵略者の子供を身篭っても、何をしても何でもないことのように受け止める。
どこまで器が大きいのか。だからこそカプセルコーポレーションをここまで大きく出来たのか。
そんな父と比べるから余計心配性に思えるのか……。
でもここまで心配性なのは少々辟易もするが、それでも娘を、家族を大事に思っていてくれているのだと思うと何だか嬉しくも感じる。
「まあ大丈夫よ」
「何がだ?」
何の脈絡もなく発せられるブルマの言葉にべジータは眉根を寄せる。
「もうしばらく、あなたのブラでいてくれるから」
「は?」
何を言っているのだ?というような顔のベジータにブルマはニッコリと微笑み言った。
「それに私がいるじゃない」
「……」
ベジータは顔を赤らめ、呆然とブルマの顔を見ている。
「娘に負けちゃうのは癪だけど、やっぱり娘に勝つのは難しいのかなあ〜」
ブルマはそう言いながらベジータの隣に座り、その腕を取る。
「……それとこれとは別だろう……」
そっぽを向き、呟くようにそう言うベジータの耳は赤い。
そんなベジータにブルマは愛しさが込み上げる。
「アンタが私の旦那さまで、子供たちの父親でよかった」
ブルマはベジータの腕に頬を寄せた。
end