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□空を見上げて (OD)
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空を見上げて(OD)vol.2


 あの日あのとき。

 一瞬見えた空は限りなく青かった。


 「里香子ちゃん!」

 無我夢中で飛び出していた。
 少女を飛びついた途端、胸に衝撃が走った。
 今までにない衝撃。
 有り得ないほど熱い。

 何?何が起こったの?

 一瞬の衝撃に思考が働かない。


「きゃー!」

 雪乃さんの悲鳴が聞こえる。

 雪乃さん?雪乃さんに何かあったの?

 ……いや違う。あたしだ……。

 衝撃に身体が舞っている。その後、再び身体に衝撃が襲う。


 ああ、あたし、倒れたんだ……何で?


 胸の辺りからドクドクと何かが噴出している感触。
 
 熱い、何でこんなにも熱いの?


「……すみれさん……」

 青島君?

「すみれさん……すみれさん……」

 青島君が何度もあたしの名前を呼ぶ声が遠くに聞こえる。

 その瞬間、青島君に抱き抱えられた。

 何だ……遠くにいたんじゃないんだ……じゃあ何で、こんなに遠くに聞こえるのかしら?

「すみれさんっ!!」

 熱い……何かが流れ出る。

 ああそうか……撃たれたんだ、あたし……。

「すみれさんっ!!」

 あたしの名前を呼ぶ青島君の声が聞こえる。青島君の温もりを感じる。
 でも、意識はだんだん遠退く。

 悔しい、悔しい。
 犯人をこの手で絶対に捕まえてやるって思ったのに。
 雪乃さんを助けるって誓ったのに。

 もう無理だ。身体が動かない。熱い。痛い。痛い。

 誰か……誰か助けて―。


「すみれさん……」

 青島君の声だけが聞こえる。

 意識が遠退く。感覚が無くなる。


 あたし、死ぬのかな?


 最後に、キャビア食べたかったな……。

 青島君の胸で死ぬのも悪くないのかな?


 ……ううん。ダメだ。死んじゃいけない。

 あたしは刑事なの。こんなところで死んじゃいけないの。


 ……ねえ、青島君。お願いがあるの。


「……あたしのなかの弾をとって……拳銃に込めて……あのバカを撃って……」

 それから、絶対に犯人を捕まえて。
 雪乃さんを助けて。

 青島君があたしを抱き締める力が強まった。

 だけどその瞬間、意識が遠退いた。


 意識が途絶える瞬間。


 青島君の肩越しに、澄み切った青空が見えた。


 end
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