雨の日の唄
□雨の日の唄61〜90
18ページ/31ページ
雨の日の唄77
また同じ相手に恋か……心底羨ましいと思う。
孫君とチチさんの夫婦は初恋を実らせて結婚したようなものだ。
孫君は……まあ結婚してから恋したパターンだと思うけど、チチさんの場合は初恋を実らせるために武術まで身に付けて、天下一武道会にまで出ちゃうくらい孫君が好きだったんだから大したものよ。
そこまで気持ちを貫かせられるなんて……本当に羨ましい。
でも私も昔はそんな行動に出たことがあった。
ヤムチャが殺されて、ナメック星のドラゴンボールを探しに行った時……。
とにかくヤムチャを助けたくて、宇宙にまで行った。
でも皮肉なことに、あの星で出会ってしまった……ベジータに……。
もし、私があの星に行かなければ、生き返ったベジータをこの家に置かなければ、今の生活は無かったのか……?
そう考えることもある。
でも、今の生活が私の全て。
きっと、どんなことがあっても、ベジータに出会ってたと私は思う。
それにしても私としたことが、あの二人の新婚時代を見逃しちゃったわけよ。ホント勿体無いことをしたわ。
天下一武道会が終わってすぐにあの二人は飛んで行っちゃって、それから5年、なんの音沙汰も無かったんだもの。
そして再会したら既に4歳の子持ち。もうびっくりしたったら無かったわ。
多分、私の人生の中で五本の指に入るくらいの出来事じゃないかしら?
でもそれだけで、この家族がいかに幸せに暮らしてたかがわかった気がした。
孫君とチチさんと悟飯君の三人、誰とも連絡の取らないくらい、充実した毎日。そんな感だったんじゃないかしら。
私とベジータはどうなのかしら?
確かに驚かせようと思ってみんなにトランクスを産んだことは黙っていた。
でも、それだけだったのかと言われればそうじゃない気もする。
何となく、トランクスと、時々しか帰ってこなかったけどトランクスの父親のベジータと、それこそ時々しかなかった家族と呼べる三人の時間を、誰にも邪魔されたくなかったのかも知れない。
今はこうして家族三人、肩寄せあって暮らしている。
トランクスが生まれた頃には考えられなかったくらい、ベジータはほとんどずっと家にいる。
私たちと共にいる。
重力室の中とはいえ、それでもこんなにも近くにいてくれる。
孫君とチチさんの7年間を思うと胸が痛いけど、それでも、こんなに近くにいれることが嬉しいのだ。
あの二人のように再び新婚のような時間を過ごせなくてもいい。
この人が傍にいるだけで、私は本当に幸せなんだ。
end