雨の日の唄
□雨の日の唄61〜90
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雨の日の唄79
そうだ。さっき悟天君が言っていたことを聞いてみよう。
「悟天君が言ってたんだけど、おばさんてすっごい早起きなんですって?」
人工池のほとりに二人で腰を下ろし、水遊びをしている悟天君とトランクス君を監視する。
「ええそうですね。ひょっとしたら5時前には起きてるんじゃないかな?」
「5時前っ!?」
5時前!? そんな時間なんてまだ夢の中よっ!?
確かに悟飯君たちの食事の準備なんて大変なのはわかるけど、その時間ってことは相当の量ってことなのかしら……?
おじさんが帰ってきてから食事の量も増えたのは大体わかるけど……。
「6時半には朝食食べてますから。ほら、僕のうちって学校から遠いでしょ? だからそれくらいに食べて出て行かないとね」
ああ、そういうことか。
悟飯君、凄く遠いところから学校に通ってるのよね。
それでも彼には何てことのない距離だろう。
私も最近空を飛ぶことを覚えたけど、私なんてまだまだだし、きっと悟飯くんたちにはお荷物でしかないのかも知れない……。
「うちの食事の量は普通じゃないって言われますから。でも昔っからそんなものだったから、クリリンさんたちに聞くまで普通だと思ってました」
悟飯君は唐突に話し出した。
そうなんだ!! 聞くまで知らなかったって、相当よね。
「……でも、おばさんはそんなに食べないでしょ?」
「女の人はそんなもんだと思ってました」
そういうものなのかしら? 悟飯君って相当天然だから、それはそう思っても仕方が無いかもね……。
「……あなたたちって、ホントすごいわよね……」
「そうですか?」
何てことはない、といった顔で私の顔を見る悟飯君の黒い瞳にドキッとする。
顔が真っ赤になるのを抑え、自分を誤魔化すためにも、何とか言葉を紡いだ。
「でも普通の人間が空を飛べるとかって、本当にすごいわよ。クリリンさんだって飛べるんでしょ?」
「ええ、飛べないのはお母さんとブルマさんくらいかな? そう言えば武天老師さまはどうなんだろ?……そうだ。ビーデルさんってカメハウスには行ったことなかったでしたっけ?」
「カメハウス?」
初めて聞く名前だ。ハウスってくらいだから家よね?
「は、はい。武天老師さまの家です。海の孤島にあるんですよ。今はクリリンさん一家も住んでるんですけど、昔はお父さんも住み込んで修行したんですって」
「へえ〜」
それは興味深い話よね。というか、あのおじいさん、おじさんのお師匠さまなんだっけ?
それに何となくだけど、そこには特別な何かがあるような、そんな感じもした。
「今度行ってみますか? いいところですよ」
「いい……の?」
「もちろんですよ」
凄く嬉しい。
悟飯君のお父さんが修行した、海の孤島にある家。
そんなところに誘ってくれるなんて……。
私は今きっと、自分でも驚くほどの笑顔になっているんだろう。
end