雨の日の唄
□雨の日の唄61〜90
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雨の日の唄81
「まだ降ってやがるのか……」
窓の外を見ると、昨日からずっと雨が降り続いている。
「……しばらく止みそうにない……か」
先程テレビの天気予報で言っていたことを思い出す。
地球(ここ)に来てから天気というものを気にするようになったと思う。
以前、他の星の地上げ活動をしていた頃は天気なんて気にしたこともなかった。
それぞれの天気によってそれぞれの利というものがあるが、そんなこと自分には関係なかった。
そんなことを考えなくても、自分には攻め落とせる自信は常にあった。
しかし、この地球へ来て暮らすようになり、この惑星の人間はいつも天気のことを気にして生きているんだということに、少しのカルチャーショックを覚えたのも過言ではないだろう。
この惑星には天気予報というものがあり、人は絶えずそれを気にしている。
晴れていると喜ぶ者もいるし、雨であっても喜ぶ者もいる。
それはそれぞれの生活に於いてのことで、それはいつも同じではないということも。
そして、妻がよく言った。
『おはよう、ベジータ。今日はとってもいいお天気よ』
『あ〜あ、今日は雨か……お出かけするのに……億劫じゃない……』
そんな言葉が日常茶飯事的に聞かれるものだから、自分もついつい天気というものを気にするようになった。
確かに屋外でトレーニングをするにあたって、晴れている方は何かと都合のいいこともあるのだが……。
しかし、やはり妻の言葉の影響はかなりあるように思う。
今もこうして外の天気を気にしているし、天気予報も見ている。
やはり晴れた方がいいのだが、今日に至っては別段雨でもいいかと思う。
今、自分の肩にもたれかかってうたた寝をしている妻が先程言った言葉を思い出す。
『雨だけど全然憂鬱じゃないわ。だってたまには二人っきりで静かにこうしてるのもいいじゃない? 雨だなんて逆にロマンチックだわ』
『何故だ?』
『何かね、世界で私たちだけ……二人っきりって感じがするんだもの』
自分の腕に頬寄せながらそう言う妻の顔をまともに見ることが出来なかった。
end