雨の日の唄

□雨の日の唄61〜90
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雨の日の唄84


 外はまだ雨だけど、このカプセルの中は快晴だ。

 チビたちは人工池で水遊びをして、僕はその監督。

 そして隣にはビーデルさんがいる。

 あの天下一武道会の前、押しかけてきたビーデルさんに舞空術を教えることになって、そりゃ僕の家のこととか、あのセルゲームのこととか、いろんなことを隠すことに必死だったけれど、今は彼女には全てのことを包み隠さずに話せるようになった。

 今まで僕には同年代の友達がデンデくらいしかいなかったから、こうしていろんなことを話せる友達が出来たってだけでもすごく嬉しいことで…。

 魔人ブウとの闘いは本当に大変だった。

 今まで辛うじて阻止してきた地球の崩壊も実際のものとなってしまい、お父さんにとっても最強の敵だったのかも知れない。

 正直なところ、最悪な敵だった。

 だけど、得たものも大きい闘いだったようにも思う。

 サタンさんは善人の方のブウという、友人を手に入れたようだ。

 ビーデルさんが『最近パパが楽しそう』と話していたのを思い出す。

 そして僕たち家族は再びお父さんを取り戻した。

 本当に偶然に、意図せずお父さんは再び命を与えられ、こうして僕たち家族の元に戻ってきた。

 父親の温もりを知らなかった悟天も、7年間僕たちを女手一つで育ててくれたお母さんも、みんなのその思いは報われた。

 ……そして、お父さんを死なせてしまったのは自分だと、そう思って今まで生きてきた僕も、お父さんが生き返ったことでその贖罪から少しだけど解放された。

 でも自分がしてしまったことの事実は消えはしない。

 あのときの僕の行動が、お父さんの命を奪う結果になったのは確かなのだ。


 お父さんが帰ってきたあの日の晩、子供部屋に来たお父さんは言った。

『すまなかったな、悟飯。あのとき、結局全部オメエに背負わす結果になっちまった。オラ、親として失格だ。オメエをあんなにも苦しめちまった』

 その言葉を聞いたとき、僕はお父さんに縋り付いて泣いた。

『お父さんのせいじゃないです、お父さんのせいじゃないんです。僕が調子に乗ってしまったからっ!!』

 そう言って泣いた。

 するとお父さんは昔よくしてくれたようにクシャクシャッと僕の髪を撫でて、

『よく頑張ったな悟飯。オラ、オメエみてえな息子を持って幸せだ。オメエはオラの自慢だ……今まで母さんと悟天を守ってくれてありがとな』

 そう言ってくれた。

 そのとき、ずっとわだかまっていたものが、すうっと溶けていくのを感じた。

『オメエはもう好きなことをすりゃあいい。学校も勉強も、オメエの好きなようにな。オメエは今まで我慢しすぎたんだ。オラみてえな親を持ったばっかりにな』
『そんなことないです。お父さんは僕の自慢のお父さんです。尊敬できるお父さんなんです!!』

 僕がそう言うと、お父さんは相変わらず太陽のような笑顔を見せてくれた。

 その笑顔に、僕は救われたんだ―。


 end
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