雨の日の唄

□雨の日の唄91〜120
14ページ/31ページ

雨の日の唄103


「悟飯君ってさ、自分の言ったことの自覚ってないよね?」
「へ?」

 自覚? 何のことだろう?

 ビーデルさんは顔を覆った両手から僅かにその瞳を覗かせている。
 その顔は赤くなっているようにも思う。

「僕、何か言いました?」

 何かマズイことでも言ってしまったのだろうか?

 するとビーデルさんは「信じられない……」と呟いた。

 え? なんで?

「……まあいいわよ。悟飯君が天然だってこと、今知ったわけじゃないからね」
「天然?」
「そこも自覚なし?」

 ビーデルさんは、はあ……と大きな溜息を吐いた。

「え? 何?」

 僕、ホント何したんだろ?

「……あんなこと言われちゃ……ドキッとするじゃないの……」
「あんなこと?」

 何のこと? 僕、何言ったんだろ?

 チラッとビーデルさんの顔を見ると、真っ赤な顔をして上目遣いで見ている。

 途端、心臓が跳ねた。

 その顔、反則だよ、ビーデルさん……。

 って、そんな顔見せられちゃ、僕が何を言ったかなんて考える余裕すら無くなる。

「……悟飯君、ちょっとスゴイこと言ったんだけど……」
「え?」

 ホント、何言ったんだろ?

「……悟飯君、私が闘ってる姿を見て、何て思ったって言った?」
「えっと……あっ!!」

『何て言うか……動きのひとつひとつがまるでダンスのようで、とってもキレイなんです。流れるような動作って言うんですかね? 時々見とれちゃいますよ、僕』

 う、うわ……なんかスゴイこと言ってないかっ!?

「あ、あの、その……」

 確かに本音だけど、口説き文句とかそんなんじゃなくって……。

「……いいわよ……わかってるから。悟飯君、率直な感想を言ってくれたんだもんね」
「え?」

 苦笑しながらビーデルさんは続けた。

「悟飯君にそんな深い意味はないってわかってるわよ。逆にそんな悟飯君の言葉だから本当なんだって思えるわ」

 それからニコッと笑った。

 ビーデルさんの方も自覚あるのかな? その顔、ホント僕の心臓鷲掴みなんだけど……。

 顔が熱い。とてつもなく熱い。今、僕の顔は真っ赤なんだろう。

「ありがとね。悟飯君」

 そう言って笑った彼女のことが、本当に好きだと思った。


 end
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ