雨の日の唄

□雨の日の唄91〜120
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雨の日の唄107


「でもあの悟飯が恋人とはねえ〜」

 感慨深い。ほんの小さな頃、4歳から知っている親友の長男は、気が付けば恋をするような年頃へと成長していた。

『まだ恋人じゃないみたいよ』
「そういや彼女じゃないって言ってましたね」

 天下一武道会のときに彼女に初めて会ったのだが、親友の長男も父親に似て意外と早熟なのか?などと思ったのだが。(自分が遅いだけなのかも知れないが……)

 まあ親友の場合は早熟というより何も知らないところから始まっているのだが、それでも子供の登場には相当驚いたわけで。

 結婚の意味すらも知らなかった親友が連れてきた子供。

 とてもじゃないけど親友の子供とは思えないほど、礼儀正しくて泣き虫の子供だった。

 それでも親友が死にドラゴンボールで生き返るまでの1年間、かつての大魔王によって鍛えられた彼は気が付けば子供にして自分よりも強い力を身に付けていた。

 さすが親友の子と思わずにはいられないほど。

 親友は彼に自分以上の力が秘められていると感じていたようで、あのセルとの戦いにおいては彼を真打へと据えた。

 結果的に親友は死に、彼の力でセルは倒されたのだが……。

 でもあの泣き虫の小さな子供があんなにも立派な青年に成長した。

 それほどに彼の幼少期は普通ではなかったかということではあるのだが、それが親友の子であると思い知らされた気もした。

 一人前に恋もし、今では規格外に強いということと、少し天然なことを除けば普通の高校生だ。

 親友が死んでから生まれた弟と母親を守る為に彼は子供ながらに頑張ってきた。

 本当に幼少の頃から苦労してきている彼は今、父親も生き返り、本当の意味での青春も取り戻したようにも思う。

 今まで彼一人がその背中に背負ってきたものを父親が背負ってくれるだろう。

 それでも破天荒な父親だから、まだほんの少し苦労も絶えないだろうけど、それでも彼の心は満たせているはずだ。

 そんな彼が青春を謳歌している姿を見てみたいとも思ったが、それは邪魔しないでおいてやろう。


「じゃあそちらに遊びに行ってもいいですか?」

 こんな風に電話で話していると、何となく彼女にも会いたくなった。

『やぁよ』
「へ?」

 自分でも何とも間の抜けた声が出たと思う。

「なんでですかっ!? 冷たいじゃないですかっ!!」

 親友に続いて彼女にまでフラれてしまった。

『だっていくら子供たちが庭のカプセルにいるって言ったって、私だってベジータと二人っきりなんだからね。ジャマはさせないわよ』
「……ブルマさんまで?」
『当然!!』
「……」

 彼女も親友と同じく伴侶と二人っきりの時間を楽しんでいるということか……。
 ここで邪魔などしたら後で何をさせるかわかったものではない。

『アンタも亀仙人にマーロンちゃん預けて二人っきりで楽しんだら?』

 彼女が電話の向こうで悪戯な笑みを浮かべたのがわかった。

「……それは……昨日もう……」
『なによ、アンタたちも結構楽しんでるのね』

 絶対に嫌な笑い方をしているだろう彼女の言葉に顔が赤くなるのを感じた。

 あちらもこちら何とも仲の良いことで……。

 その中に自分たち夫婦も含まれるとこに気付いて、なんだか照れるような、それでいて嬉しいような、何だか複雑な気持ちになった。


 end
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